O2+：4th

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*yoohei side





あの発熱はやっぱり知恵熱的なものだったのか、
次の日にはすっかり熱も引いて
具合の良くなった彼女はいつものように帰っていった。




臨時株主総会とやらが終わるまで
また体調を崩すんじゃないかとか、


終わったあとの結果によっては
また具合が悪くなるんじゃないかとか、


その間も色々心配だった。




臨時株主総会が開かれた当日の夜に
「どうだった！？」って連絡したけど、
まだ分からないって言われて


すぐに社員に伝えられるわけじゃないんだって
俺までヤキモキしたその数日後、
彼女から買収は無くなったという連絡をもらった。




市場全体に言えることだけど、新型ウイルスの影響で
彼女の会社の株価も他社と同様に大幅に値下がっていたことと


会社側が提示した今後の中期計画に賛成した株主が多く、
ファンド側への賛同が少なかったことも手伝って
買収は撤回になったらしい。




ファンドが買収に乗り出すと
大抵の会社は乗っ取られてしまうって聞いていたから
彼女から連絡を貰って、俺自身もホッとした。




『新型ウイルスのおかげもあって助かったなんて、
なんだか皮肉です』




彼女は電話越しにそう言っていたけど、




まあ確かにね笑
未だに猛威を振るっている訳だし、
感染の恐怖もなくなってはいない。


俺たちのバンド自体も、予定していたライブの中止や
ベストアルバムの発売延期もあったりと散々で。




大変な思いをしている人がまだまだたくさんいるから
憎いウイルスのおかげもあるっていう部分は
素直に喜べないかもしれないけど


それでもなんとか助かって、
乗り越えられることが出来て良かったなって
俺は思うよ。




取り敢えず職を失くすという事態もなくなって、
彼女自身も少し落ち着けるんじゃないかと思うと
とにかく一安心だった。







.
.
.







「え、どうしたの？」




今度はなに！？




一連のゴタゴタが過ぎ去ってからしばらくして、
週末、遊びに来てくれた彼女の顔を見てそう思った。




「洋平さん・・・、
しばらく落ち着けそうにないです・・・」

「え、何があったの？」




なんのデジャヴか。


扉を開けた玄関先には、
あの日のように浮かない顔をした彼女が立っていた。





*

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