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ステージに上がればそこからはいつも通り
しっかり集中できて、
Aちゃんから電話がなかったという事実も
すっかり忘れかけていた。
すげえ笑顔でステージを見てくれてる子とか
俺らの音楽に乗って飛び跳ねてる奴とか
とにかく客席はみんな楽しそうで、
今日も良いステージになるって確信した。
ノリのいい激しめの曲のイントロが流れると
待ってました!と言わんばかりに客席が大きく
揺れてうねりだす。
その時だった。
演奏中でマイクから離れていたから
声は拾われなかったけど、
思わず “あっ!” っと言ってしまっていた。
激しく揺れる客席の中で人波が崩れて、
その中に飲み込まれていくAちゃん。
え、嘘だろ!
ちょっと待って!
大きくドミノ倒しになっていく人波。
反対側から少しずつ立ち上がってくる人達の中に
Aちゃんが見当たらない。
・・・どこ行った!?
まさか一番下で下敷きなんてことないよね!?
「・・・洋平、集中」
客席を凝視したままの俺に声が掛けられて
ハッと気づいたら、
もう少しで歌が始まるところだった。
呆れたような困ったような顔したまーくんが
俺の隣に立って声を掛けてくれて、
助かったと思って、ありがとうって意味で
そのケツをパスッと叩いた。
歌詞を飛ばさないように気を付けながら
Aちゃんを探したけど結局見当たらなくて。
でも客席を見る限り全員無事みたいだし
スタッフの動きを見てもケガ人とかはいないみたいだから、
大丈夫だったんだろうと思うことにして
平常心を取り戻すために
俺も、もう一度ライブに集中することにした。
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作者名:叢雲 | 作成日時:2018年9月1日 0時