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*
聞いた話だけど、
Aちゃんて車好きなんだよね？
Aちゃんの車に乗ったことのあるヒロが
「見た目は女の子が乗りそうな車なのに
エンジン音とか凄かったよ」って言ってたし。
そういう車に乗る人、
特に女の子が乗るなんて
よっぽど好きじゃないと乗らないだろうし
俺的には「高速大丈夫だった？」なんて、
心配する必要まったくないと思うんだけど。
散々人のことを振り回しておいて、
呑気にいちゃつき始めた目の前のふたりに
思わずそんな毒舌を吐きたくなった。
はあ、あのふたりに振り回されたせいで
イライラしてる。
心が狭くなっちゃってるよ、俺。
まあ、振り回してきたのは洋平の方だから
Aちゃんに罪はないけど。
そんなことを思っていると
「ねえ、VIPのあとも泊まれるでしょ？」
「次の日オフだし久しぶりにゆっくりしよ？」
「夏休み中ずっと居てくれてもいんだよー？」
なんて洋平が必死にAちゃんのことを
口説いてるのが聞こえてきて。
ああ、社会人はお盆休みか。
そう言えば洋平はN.Y.で
同棲まで考えてたくらいだもんな。
それで夏休み中は一緒に居ようと
Aちゃんを引き留めようとしてるわけね。
散々振り回されてイライラしてた俺は
必死になってる洋平を見て
ちょっとした悪戯を思い立って、
その手からスマホを奪い取った。
「ちょっ、まーくんっ！なにすんの！」
焦る洋平のことは無視して
Aちゃんと会話を始める。
「Aちゃん？俺、白井ですけど」
「まーくん！Aちゃんに何の用！？」
「洋平フラフラになってぶっ倒れたから
お客さんが引いたら迎えに来てあげて」
「ちょっっ、まーくんっっ！」
「うん、じゃあね。よろしくお願いします」
通話を終えて洋平にスマホを返すと
「なんてこと言うんだよ、まーくんは！」
「Aちゃんが心配すんじゃん！」って
文句言われたけど
ライブでかっこつけておきながら
人のことを散々振り回してくれたお礼だよ。
今日は落ち着きのない洋平を見張るので
大変だったから、
VIPではもうちょっと落ち着いて
ライブさせてもらいたいもんだね。
*
犬も喰わない / side M - END.
まーくんの「そこじゃねえ」の理由でした。
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作者名：叢雲
| 作成日時：2018年9月1日 0時
