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*
洋平は、さっき投げ出したスマホを
わちゃわちゃと拾い上げて
電話したみたいだけど、
「わー、まーくん！どうしよう！
Aちゃん出てくんない！」
「・・・知るか。」
もう、その後の洋平は最悪で。
マイクの前に立てばきっちり歌う奴だから、
そこは心配してないんだけど。
リハーサル中にマイクから離れれば
スマホをチェックし、
折り返しがないと落ち込み、
挙句俺の横に来て
「久しぶりのライブハウスだから
前に行きたいって言い出してさ」
「でも、Aちゃん箱慣れしてないじゃん？」
「だから危ないかなって思って言ったのに」
「あんなに怒ることないよね？」
なんて勝手に恋愛相談をし始めた。
箱慣れしてないじゃん？とか言われても、
俺、そこまでお前の彼女のこと
詳しくないんだけど。
「あー、どうしよう。
まーくん、掛かってこないよ」
「まだ怒ってるのかな？」
「ねえ、また掛けてもいいと思う？」
「しつこいとか思われるかな？」
「それとも待ってた方がいい？」
とかほんと。
しつこいのは洋平の方だし、
とにかく
「・・・うるさい。」
「え、そんなこと言わないでよ！」
リハーサルを終えて、楽屋に戻ってからは
いつも通り「もう一度ここ合わせたい」とか
「このアレンジちょっと変えたい」とか
ギター片手にずっと弾いてはいるんだけど
やっぱりAちゃんのことが気になるのか
目の前に置いたスマホをちらちら確認しながら
落ち着かない様子だった。
開演時間が近づいて、
いまだにスマホと睨み合う洋平に声を掛ける。
「ほら、洋平始まるよ。もう諦めなよ。」
「いや、でも」
「開演時間だし、
さすがにもう掛かってこないよ」
「あー、だよなー・・・」
って、名残り惜しそうにスマホを置いて
楽屋を出た。
*
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作者名：叢雲
| 作成日時：2018年9月1日 0時
