- 31. ページ32
*
「洋平さん？・・・どうかしました？」
「んー？なんでもないよ」
俺がいつまでも抱き締めたまま離さないから
そう聞かれたけど
大事な人がこうして家に居てくれて
見送ってくれたり、出迎えてくれたり、
Aちゃんが居るだけで外での緊張が解けるのを
感じた瞬間もあったし、
一緒に過ごしてた間の出来事が
急に頭の中に、ばーっと蘇ってきて。
なんかさ、さっきからAちゃんのこと
好きが溢れて止まんないんだよ。
ライブが成功して、
ステージもめちゃくちゃ楽しかったし、
その興奮が収まってないのもあるかもしれない。
それともライブの最後に
ひと口飲んだシャンパンか、
打ち上げで呑んだビールのせい？
なんて彼女への気持ちが止まらない理由を
色々考えてみたけど、
今は期間限定だけど、いつかこのふたり暮らしが
俺の日常になればいいなって
今、猛烈に、心の底からそう思ってるよ。
「打ち上げどうでした？」
「楽しかったよ」
「お酒は大丈夫でした？」
「うん、軽く口付ける程度にしといたから」
抱き着いたままの俺を心配してくれているのか
Aちゃんが色々聞いてくる。
「それより喉痛いかも」
「え、大丈夫なんですか？」
Aちゃんの耳横に口を寄せて
ひそひそ声で話したら心配されて
「ふはっ。ごめん、嘘。そんなに酷くない」
「もうっ、なんでそんな嘘吐くんですか」
って、ぱしっと体を叩かれて。
だってさ、好きすぎてちょっと泣きそうとか
俺、初めてだから。
せっかくAちゃんも笑顔で迎えてくれたのに
驚かせたくないし
涙が零れる前に、
とにかく気分を変えなくちゃって思ったから。
「あいつらもAちゃんに
打ち上げ来てほしかったって」
「え、ほんとですか？」
「うん、だから次はおいでね」
ぽんって頭を撫でたら彼女が嬉しそうに笑った。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：叢雲
| 作成日時：2018年9月1日 0時
