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*
最終日のリハは一連の流れを確認しながら
細かいところまで注意が入って、
俺が思っていた通りやっぱり時間が掛かった。
初のスタジアムで俺らメンバーはもちろん、
スタッフにも気合いと緊張があるのが
はっきりと分かる。
一度、Aちゃんに連絡しようと思ったけど
そんなわずかな時間も取れないほどで、
連絡しよう、しよう、と思ってるうちに
どんどん時間が流れてしまった。
夜遅く家に着いて
物音を立てないように静かに帰ってくると、
スマホ片手にリビングのソファに座っている
彼女が居た。
「あ、洋平さん！おかえりなさい」
「待っててくれたの？」
微笑んでくれる彼女の隣に座って、
その小さな手の中にあるスマホを
指でとんっと叩いた。
「もしかして連絡待ってた？」
「いえ、漫画読んでました」
そうは言うけど、
結局は俺のこと待っててくれたんだよね？
俺が気にしないようにって漫画を理由にしてさ。
「ごめんね？
なかなか時間取れなくて連絡出来なかった。
寝てていいって言ったのに」
「いえ、だいじょぶです。
それに明日が楽しみであんまり眠くなかったですし」
そう言って彼女は俺にふわっと笑ってみせて。
Aちゃんのその顔を見たら
なんだか急に体から ふっと力が抜けていって
そのことに俺自身がびっくりした。
「洋平さん？」
「ん？」
「どうかしました？」
「え、なんで？」
「今、ちょっと表情が変わったから」
「ああ、」
そんなに表情変わったかな？
Aちゃんは細かいところまで
俺のこと、よく見てくれてる。
「いや、なんかちょっと体の力が抜けたかな」
「あ、ですよね。
VIP前ですし遅くまでお疲れさまでした」
俺の言葉にリハが大変だったと思ったらしい彼女が、
そう言ってまた優しく笑ってくれた。
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作者名：叢雲
| 作成日時：2018年9月1日 0時
