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*
でも、そうだよね。
まーくんの言葉を最後まで聞かずに、
俺、電話に出ちゃったから。
片手で “ごめん” てジェスチャーしたら
無言で視線を外された。
ほんとは喉休めなきゃいけないし、
Aちゃんとは一緒に帰る約束してるから
すぐ会えるんだけど、
もう少し話していたくて
「駐車場どこに駐めたの？」
「高速大丈夫だった？」
とか色々聞いて。
ああ、そうだ。
そう言えば当選画面を見せてくれた時に
せめてVIPまで大丈夫でしょ？って
言っちゃったけど、
「ねえ、VIPのあとも泊まれるでしょ？」
「次の日オフだし久しぶりにゆっくりしよ？」
「夏休み中ずっと居てくれてもいんだよー？」
少しでも長く一緒に居たくて、
Aちゃんのこと必死に口説いてたら
まーくんの笑い声がして
えっ！いつの間に隣に来てたの？
さっきごめんて謝ったら遠ざかって行ったのに。
俺が驚いているとまーくんの手がのびてきて
がしっとスマホを強奪された。
「ちょっ、まーくんっ！なにすんの！」
「Aちゃん？俺、白井ですけど」
「まーくん！Aちゃんに何の用！？」
「洋平、フラフラになってぶっ倒れたから
お客さんが引いたら迎えに来てあげて」
「ちょっっ、まーくんっっ！」
「うん、じゃあね。よろしくお願いします」
Aちゃんと勝手に話した後、
通話の切られたスマホが俺に返されて
「なんてこと言うんだよ、まーくんは！」
「なに？フラフラになったかっこ悪い洋平は
知られたくなかった？」
「いや、心配すんじゃん！
え、てか、まーくんなんか怒ってる？
話の途中で電話に出たことは謝ったじゃん」
「そこじゃねえ」
「・・・え、？え？・・・じゃあどこ？」
俺の言葉を無視して
まーくんはスタスタと歩き出した。
いや、待ってよ！
ほんとにどこよ！？
まーくんの怒りポイント、
「まったく分かんないんだけど！」
喉を温存しなくちゃいけないのに、
思わず叫んでしまった俺の声が楽屋内に虚しく
響き渡った。
*
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作者名：叢雲
| 作成日時：2018年9月1日 0時
