だから好きだっつってんじゃん from Anthem

10. ページ10

.


「っしゅ！！」

『大丈夫です？』

「あい…」

ヒーターの前に座ってタオルにくるまって
スタッフさんが温かい飲み物までくれた

その間も7人は何度も入れ替わりのシミュレーションをしていた

7人とも濡れてんのに寒くないのかな…

むしろ濡れてる事が楽しいとか？
キャッキャ戯れる彼らは、何年経っても出会ったときのまま
見た目だけが大人になっていく

それは私も同じか…


『玲於ちゃんと仲直りできた？』

「えっ？」

もう何年もGENEに付いてくれているベテランのスタッフさんが声をかけてくれた

『朝言い合いしてたでしょ？』

「あはっ、すみません公共の場で！」

『見慣れてるからいいんだけどね〜』


見慣れてる…か。

確かに私も玲於くんも、プライドと負けん気だけは無駄に持ち合わせてるせいで
家だろうと、楽屋だろうと、現場であろうとも何回も何回もぶつかってきた

付き合い始めて3年半くらい経つけど
それでも1度も玲於くんを嫌いになった事はない


そりゃ多少、ムカつくとかふざけんなとか思うことはあるけど

それ以上に彼が私にもたらす影響力は大きくて
嫌いになんてなれそうにもない


私がドラマや映画でちょっと小さな役をもらって帰ってくれば、
彼は主演をもらって帰ってくる

やっぱり何年経っても私の前を歩く玲於くんは
大きな背中で、ほら早くついて来いって言わんばかりに私の腕を引くんだ


.

11.→←9.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す