【文スト】黒のエンチャンター

６異様な光景 ページ7

しまった、敵構成員倒す時並みの異能でッ


江口はまるで転がっているかのように飛び続けるボールを眺める。どう見ても異様なその光景を。

ってこれパス練だよな！？多分江口とか言う奴みてぇに手袋にポスンってしなきゃいけなかったんじゃねぇか！？つか今ので誰かに目ェ付けられたりましてや異能者だなんてバレたら今後の任務に支障が

江口はようやく落ちたボールと中原を交互に見て、ぽそりと呟いた。

「…小さいのに怪力か、」

「ーーーーッ、」

太宰と組んでからさんざ言われ続けた漢字混じりの三文字(小さい)よりも、脳内の算盤で弾き出した
【任務に支障】の方が彼の感情を揺るがせた。



いくら最年少幹部太宰治の相棒を務めていたとはいえ組織に太宰がいない今、中原は遊撃隊隊長という、周囲の構成員より安定はしているが、首領からすれば吹けば飛ぶような地位だけだ。

裏社会は【失敗】に酷く厳しい。それは中原が数多くの部下を抱える上司(処理する立場)だから、そして何より部下(処理される立場)だからこそ身に染みて理解している事。

信頼、地位、職。

在り来たりで真っ当な会社の失敗で失われる物ならまだいい方、裏社会での一度の任務失敗で失われるモノは二度と取り戻せはしないのだから。



他の奴等は俺の大暴投に気づいていない、いざとなったら江口だけ殺れば……！！

一瞬で其処まで思い詰めたが故に、次の江口の一言に中原の思考は停止した。


「ーーーー面白味の無い、」


例の体育教師に怒られない程度の速さで走ってボールを取りに行く彼は別に大した事では無いとでも言いたげな無表情だ。
どう見ても野球部でも無い普通の人間に出来る所業では無いにも関わらず。まるで高校の授業１時間使って『火は熱い』事を身をもって証明するのを見せられたかのようなやれやれといった顔で。

何よりそれこそが異様な光景(・・・・・・・・・・・・・)

「………は………？」

【警戒】のリストに｛江口A｝という名前が加わった瞬間だった。

７尾行と馬鹿→←５パス練相手

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す