【文スト】黒のエンチャンター

５パス練相手 ページ6

五限。体育はD組と合同でソフトボールだ。中原は経験上初めてのスポーツに若干心を躍らせていた。

パス練相手はD組の男子。
筋肉はあまり付いていない、インドア派のごく普通な無表情高校生という印象だ。構成員には向かなそうである。

「中原だ。宜しくな」

一応世話になる相手という事で軽い挨拶をする。ここ１週間の経験上、偽名を名乗るとボロが出るのはわかっていたので苗字だけだ。相手は中原を一瞥するとため息を軽く吐く。

「……僕は江口A。所でだ、中原京雅。」

「何だよ。ーーーー？」

中原は微妙な違和感を覚えたが、その正体はわからなかった。

「…『ナカヨシコヨシするつもりは毛頭無い』のなら宜しくなんて言葉は矛盾している上にキャラ崩壊を導くのでやめた方が良い。」

無呼吸(ノンブレス)で言うだけ言って、彼は一定の距離まで離れてボールを中原に投げる。ボールは中原の革手袋(グロォブ)にスポンと収まった。

「は…………はァ？？？」

訳がわからない。中原はボールを持ったまま立ち尽くした。
何で、こいつはD組の筈なのに何故俺の自己紹介の文句を知って……つか俺の偽名フルで此奴に名乗ったか？……あとキャラ崩壊って何だ。

「早く投げろ。今彼女にフラれて当たりが強いんだ、彼奴」

親指で指す方を見れば確かに若干目元の腫れた体育教師(筋肉質)の姿があった。怒らせたら面倒だから、と江口の目が語るので、訳も分からず兎に角投げると


ブンッーーーー！！！


バウンド無しで地面すれすれを２００m先まで飛んでった。

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