【文スト】黒のエンチャンター

４３第三者目線の話 ページ44

自分で手首切ったみたいじゃない、やめてよ

それが母親の返答だった。みたいじゃない、切ったんだよ。あなたに見て欲しくて、自分でーーー
流はこのやり方が間違いである事を知った。

彼にはもうどうすればいいかわからなかった。
気づいて貰う為にはどうすればいい？
これ以上僕は何をすればいい？
趣味の空の撮影にも弟が興味を持ち出した。
勉強は元々あいつの方が出来が良い。
人間性は言わずもがな。

どうすれば？どうすれば僕はーーー

その頃にはもう『褒められたい』だとか『甘えたい』何ていう感情より、
『関心を得たい』欲の方が優先順位が高かった。

【何でも良かった。】

テレビで見る注目されたい通り魔や何やらと同じ理由で、流はクスリ売りに手を出した。何故クスリだったかと問われれば、手を出すのが楽だったからに相違ない。
買い値は十錠五千円。売値は十錠一万円。売り上げの五千円は屋上から飛ばした。別に流は金に興味が無かったし、七不思議の一つとして一般の真面目な生徒を屋上から遠ざける為でもあったから。


彼は屋上で待ち続けた。自分に関心を向けてくれる人間を。違法行為に手を染めた自分を叱りつけてくれる親を。


流が待つ事に飽き始めた頃には、事態は後戻り出来ないレベルにまで発展していた。
そう、彼はポート・マフィアに目をつけられていたのだ。


待つだけでは何も変わらない。
流はその事に気づくのが遅過ぎた。〉

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