【文スト】黒のエンチャンター

３９アニマルファンタジーの真相 ページ40

引っかかる事だらけだ

中原はデスク用チェアを軽く回して考える。
あの後、ナガルは何だかんだであの発言の理由を教えてはくれなかったし、江口だって今日はなんだか様子が可笑しかった。

「それに、こいつはもう捕らえたしよ……」

題名に〈田代 つばさ〉とある原稿用紙数枚。帰り際に受け取ったそれを蛍光灯に透かして見ると、あまり長くはない事がわかる。田代……クスリの買い手で、幻覚等の症状が見られた女子生徒だ。今は他の買い手の生徒達と共にポート・マフィア管理の施設に収容されている。

ものは試しだ、と流し読みするつもりでそれを開いた結果は

絶句。

〈ふわふわのシロウサギになって空を飛ぶ。
勉強するより食べるより遊ぶより、シロウサギになってる方が楽しい。

シロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギに

ふわふわのシロウサギになって森を駈ける。
オオカミが後ろにいる。逃げなくちゃ。鎌を持った赤ずきん。森を駈ける。逃げ切ったと思ったのに。ありんこがふわふわを食い破って私を

シロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギに血塗られた赤ずきんなりたいシロウサギになって空を森をシロウサギになりたいシロウサギに私をなりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいシロウサギになりたいオオカミが見てるシロウサギにありんこがなりたいシロウサギになりたいシロウサギに〉



中原はこの作風に酷く見覚えがあった。



ーーー今日のお客さんはキイロハリネズミさん。



そうだ。床に落ちてる話を漁って読んでいると度々出てきたこのアニマルファンタジー。確か、全体の５割がシリアス、ハッピー３割ファンタジー２割……アニマルファンタジーは１割もなかった気がする。江口は最初俺が「モデルにしてるのか？」と問うた時、「違う、本人だ。」と応えた。それが、もしもファンタジーにも当てはまるとしたら？そのアニマルファンタジー１割が彼奴の中での【クスリ関係】という枠組みの中で書かれていたとしたら？


中原はジャックナイフを丁寧に手入れして、スクールバッグに入れた。

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