35空見 流と題名に書かれていた原稿用紙の中身 ページ36
その日の夜。中原中也は江口のメモの下に重ねられていた十数枚の原稿用紙を自宅に持って帰っていた。学校でも一度読むには読んだが、いかんせん時間が無さ過ぎたのだ。
題名は、空見 流。それはどうやら短編集の様で、小説書きとセリフ書きと詩の様な物が入り乱れていたが、内容は一貫していた。
家族。愛。孤独。劣等感。そして死、またはそれに繋がる行為について。
〈人がもし彼の呟きを聞いていたなら、人は彼を酔狂なものだと笑うだろう。ただ、彼にとってはその呟きすらも、彼にとて少なからず存在する、自己顕示欲たるものの象徴であった〉
〈人間の体温とは愛の証明である。故に恋人同士は手を繋ぎたがるし、久々に会う友人とはハグをする〉
〈さア、
赤色の涙を流しませう
手首をぴりりと傷つけませう
此れが私の自己主張
どうかきずいて下さいませ
此れが繰り言で終わる内に〉
〈三列で歩く父、母、弟を後ろから撮った。表情が無くてもわかる。幸せそうな三人。写真の題名は正しく、「家族」だった。何故?何故あの背中はあんなにも遠いのだろう?〉
〈嗚呼、いっそお前を嫌いになれたら、
僕はどんなに幸せだろうな〉
〈あれを飲み込めば?
あれを突き刺せば?
あれを首に巻けば?
嗚呼、何と喜ばしい事でせう
こんなにも僕の周りに死はころがつていたのです〉
〈寒くも無いのに、冬でも無いのに鳥肌が立った〉
〈生きるのが苦しいと書いて「いきぐるしい」と読むのです〉
〈ごめん、わかった。
〈なぁ、僕は欲張りなんだろうか?
家族から見てもらいたいというのはいけない事なんだろうか?〉
〈母さん!僕空を見るのが好きなんだ!
そうなの
父さん!学校で友達が出来た!
そうか
母さん母さんこれ通知表!僕ね、
そうなの
あのねっーーーー
そうか
あのね、……
セイ!よく頑張った!
…… 〉
〈時折非道い破壊衝動に駆られる時がある。ここの棚を蹴り飛ばせば皿が全部割れるだろうかとか、…このまま手に力を入れ続ければこのグラスは割れるだろうか、とか、ここから落ちれば真下にある倉庫の天井にぶつかって骨が粉々になるだろうかとか、
そしたらあの人達は、
少し位僕を見てくれるんじゃ無いかとか。
言わないさ。
それを口に出した所で
そうなんだ
としか言われないから〉
36空見 流と書かれていた原稿用紙の最後の1ページに書かれていた内容→←34「迷惑を」
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悠誠(プロフ) - コメント下さると嬉しいです!リクエスト等ありましたらお申し付け下さるととっても喜びます!! (2016年10月4日 15時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 再開します! (2016年8月16日 16時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - なんか更新出来ました (2016年8月14日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 帰省の為Wi-Fiが繋げないので更新が16日まで出来ません。申し訳御座いません (2016年8月13日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 中原さんを軽率にオバケ苦手キャラにしてしまった……なんか体術が得意な人って物理攻撃効かない物(代表:幽霊)に苦手意識ある気がしませんか?国木田さんもそうですけど。(社長はその後光で幽霊さん浄化される。(確信)) (2016年8月8日 19時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠誠 | 作成日時:2016年6月26日 19時