33生きる術 ページ34
14歳の夏。中学から帰って来たAが見た物は余りにも残酷だった。
壁一面に広がる血。天井も床もどこもかしこも弾倉だらけ。その中に転がる真っ赤な自分の両親は酷く非現実的で、まるで芸術作品か何かの様。
Aは遺体を目の前にして、ただ、立っていた。
ーーーー『教育環境』と言うものは恐ろしい物で、子供にとって全ての基礎になる。例えば、詐欺師の夫婦の元に産まれた子供は本来なら正義である警察を敵だと教えられる、といった事だ。
Aの家庭の場合、銃や手榴弾等といった危険物は生活と隣り合わせにあった。故に、父はこう言った。
『まず、学べ。学業はやってて損は無い。あとは過去に囚われるな。お前を食らわんとする敵は未来に居る。故に敵に背を向けるな。常に未来の自分の為に行動しろ。何を使っても良い。
……ただ、まぁ軍警の世話になる事は面倒くさいから止めとけ。』
子にとって教育とは、家庭とは全てである。それはAも例外では無かった。ーーー
血に塗れた遺体を見る。
「………父さん。母さん……10分だけ、下さい……ッ」
今涙を流さなければ、未来の自分はきっと後悔すると思うから。僕がこれから強くなれるように。10分だけ、Aは
そして目を閉じ、一度大きく深呼吸。
「………赤いな…」
開いた瞳は光を宿さず目の前の遺体を物として観た。無感動にそれに対して異能を発動する。
氏名 江口 正記
性別 男
死因 ポート・マフィア百人長、広津柳浪の異能力『落椿』による。
遺言 「あの子を、頼む」(広津柳浪に対して。)
情報はまだあと2メートルはあったが、Aにとってはその数行で充分だった。
Aは中学で必要な物だけを持ち出し、真っ直ぐにある場所へと向かった。自分はまだ子供だ。一人では生きられない。何処かに居候を頼むしかない。
では何処か?Aはとあるマンションの一室のインターホンを鳴らした。出てきたのは目を丸くした広津柳浪。
Aは彼を選んだ。両親を殺したのが彼だと知った上で、生きる為に。
組織の指示とは言え、友人を殺害してしまった事実。遺された言葉、「あの子を、頼む」。30年以上もの付き合い。心地良かった時間ーーー
父と彼の関係全てを利用して、Aは広津の罪悪感につけ込んだ。
「家が、無いんです。行くあてもなくて、皆死んじゃって…………父さんに、何かあったらリュウさんを頼れ、と言われました。
助けて、下さい」
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悠誠(プロフ) - コメント下さると嬉しいです!リクエスト等ありましたらお申し付け下さるととっても喜びます!! (2016年10月4日 15時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 再開します! (2016年8月16日 16時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - なんか更新出来ました (2016年8月14日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 帰省の為Wi-Fiが繋げないので更新が16日まで出来ません。申し訳御座いません (2016年8月13日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 中原さんを軽率にオバケ苦手キャラにしてしまった……なんか体術が得意な人って物理攻撃効かない物(代表:幽霊)に苦手意識ある気がしませんか?国木田さんもそうですけど。(社長はその後光で幽霊さん浄化される。(確信)) (2016年8月8日 19時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠誠 | 作成日時:2016年6月26日 19時