28屋上にて ページ29
話は数分前の屋上に移る。
ピー、ピピピッ、ピー、ピピピッ
いつも通り一眼レフで雲を撮影していた流は自身のスミャホが鳴らす電子音に反応し、飛び起きた。
来客を示すサインだ。屋上へ続く階段の途中に仕掛けた隠しカメラが人間を感知すると鳴る様に設定してある。流はスミャホを操作して、隠しカメラの映像を見た。数少ない友人、江口 Aか中原 京雅のどちらかである事を………心の何処かでは『客』である事を祈りながら。
結果から言おう、それは『客』だった。
無言のまま、『客』を迎える準備を始める。と言っても流のやる事は非常に少ない。屋上の真ん中に石を転がしておいて、貯水槽の横、屋上の下層からすれば死角の位置に隠れている、ただそれだけ。
ガチャリ。扉が開く。
現れた『客』は金髪ピアスの1年男子生徒だった。以前来た時はこんな風では無かった、と流は思いながら彼の動向を見守る。男子生徒は五千円札を二枚石の下に置いて扉の隣にある
それを見計らって流は密閉式の袋に入った10粒のクスリを雨樋を通して下層に送る。男子生徒は袋を拾い上げて屋上を去って行った。
それをスミャホで見送り、数秒の沈黙。
「はぁ〜〜〜………」
ようやく緊張の糸が切れた。
踏み外さぬよう足場を確認しながら梯子を降りる。金額はちょうど一万円。真面目な子だったのだろうか、五千円札二枚はちゃんと角が揃えられていた。
「……嗚呼、今日も風が強いなぁ」
流は一枚をポケットに、もう一枚を風に乗せて飛ばした。自分が七不思議の一つに数えられているのは知っている。だからこそ、噂の通りにするのだ。そうすればまともな人間は屋上へは来ないだろう。そもそもこの学校では屋上への立ち入りを禁止している。
流はクスリの売人である。その行為は金の為ではない。スリルの為でもない。他人の人生を狂わせる事に快感を得ている訳でもない。むしろそれに関しては罪悪感を覚えている程である。
では彼は何の為にわざわざ犯罪に手を染めているのか。
答えは、【自己主張】。
彼の自己主張についてはまた今度に記す事にしよう、今はそんな事より先に定位置に、貯水槽の横に戻らねばならない。
何故なら。
ピー、ピピピッ、ピー、ピピピッ
例の電子音が彼の胸ポケットの中で鳴っていたからだった。
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悠誠(プロフ) - コメント下さると嬉しいです!リクエスト等ありましたらお申し付け下さるととっても喜びます!! (2016年10月4日 15時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 再開します! (2016年8月16日 16時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - なんか更新出来ました (2016年8月14日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 帰省の為Wi-Fiが繋げないので更新が16日まで出来ません。申し訳御座いません (2016年8月13日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 中原さんを軽率にオバケ苦手キャラにしてしまった……なんか体術が得意な人って物理攻撃効かない物(代表:幽霊)に苦手意識ある気がしませんか?国木田さんもそうですけど。(社長はその後光で幽霊さん浄化される。(確信)) (2016年8月8日 19時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠誠 | 作成日時:2016年6月26日 19時