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19異常と血 ページ20

休館日の図書室。人っ子一人居ない本棚の間を目的地まで真っ直ぐに歩いて行く。辿り着いた扉を開けると、そこには変わらぬ紙だらけの床。隅の方に乱雑に積まれた机と椅子。部屋の中心で姿勢良く机に向かう江口A。

「……遅かったな。」

彼は呟いて、数枚の原稿用紙を差し出した。いつも通り、中原を見る事も無く。中原はその紙の束を全力で払い除けた。狭い部屋に舞うホコリと原稿用紙。中原は問う。

「手前は何者だ。」

「そう言われてハイと答える人間(キャラクター)だと思うか?」

ちらりと周囲の紙に混じった原稿用紙を眺め、江口は手元に視線を戻した。

「微塵も思わねェなーーーなら」

ガタリ、机が鳴る。椅子が倒れる。

「力づくで吐かせる迄だ。」

中原は江口の首を両手で掴んで持ち上げた。徐々に圧迫していく。薄目で此方を見る江口の瞳は、怯え、恐怖、そういった感情を全く感じさせなかった。例えるなら、出来の良い人形を眺めるかの様な、むしろ喜んでいるかの様な、そんな瞳。

矢張り此奴は異常なのだ(・・・・・・・・・・・)

中原は嫌悪感で体が震えるのを感じた。

「……ぃ、…」

「あ゛?」

咳混じりの掠れた声が空気を震わせる。
しかし、それは、余りにも。


ーーーいいのかときいているんだ、

なかはらちゅうや


今俺は本当に此奴の首を絞めているのだろうか。
状況的には俺の方が明らかに上の筈なのに。
俺は奪う側で、此奴は奪われる側の筈なのに。


それは余りにも、いつも通りだったのだ。
名を呼ぶ態度も、人を小馬鹿にした様な瞳も。
声がいくら掠れようと、所々に喘ぎに似た呼吸が混じっていようとも。


から、とプラスチック製の何か軽い物が紙に覆われた床に落ちる音がした。思わず中原はそちらを見る。万年筆のキャップ。滑り止めの無いそれはからりからりと床(正確には紙の上)を転がり、紙に埋もれて静かになった。

直後の事。

「ーーーーッ!!」

「いッッッ!!!???ーーーてぇなこの糞野郎が!!!!」

江口は乱雑に積まれた椅子と机の中に叩き込まれた。派手な音が鳴る。崩れたそれらから転がり出たのは赤いインクの漏れた万年筆、では無くて、

歪んだペン先に中原中也の血が付いた万年筆だった。

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悠誠(プロフ) - コメント下さると嬉しいです!リクエスト等ありましたらお申し付け下さるととっても喜びます!! (2016年10月4日 15時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 再開します! (2016年8月16日 16時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - なんか更新出来ました (2016年8月14日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 帰省の為Wi-Fiが繋げないので更新が16日まで出来ません。申し訳御座いません (2016年8月13日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 中原さんを軽率にオバケ苦手キャラにしてしまった……なんか体術が得意な人って物理攻撃効かない物(代表:幽霊)に苦手意識ある気がしませんか?国木田さんもそうですけど。(社長はその後光で幽霊さん浄化される。(確信)) (2016年8月8日 19時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠誠 | 作成日時:2016年6月26日 19時

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