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18知らない名前と呼ばせない名字 ページ19

「ど……ど、したの、京雅、ぅ゛」

「答えろ。」

持ったまま腕を上げる。足がギリギリ爪先立ちで着く位まで。その時、彼はぼんやりと違和感を覚えた。

ーーー此奴、俺の事を『京雅』っつったよな。

中原がその違和感から導き出される真実を捕まえる前に空見は答えを言った。

「Aからーーー伝言ッッ」

「……何?」

「中也って人、僕は知らないっ」

ドサッ

Aの顔が頭に浮かぶ。図書室だ。行かなければ。
中原は梯子に足を進めかけて、止まった。
その前に、空見が口外しない様にしなくてはならない。異能で飛んだ。襟首を掴んだ。良くても教師に目をつけられるだろう。任務遂行まで時間がかかる事は明らかだ。
空咳を繰り返す空見は怯えた様な目で彼を見ていた。

嗚呼、この目だ。
血が(たぎ)るというのはきっとこんな感覚を指すのだろう。

暴力による畏怖と崇敬。
それこそが俺の生きる世界。

さて、どうすればあくまでも合法的に此奴を黙らせる事がーーー

「ーーー弟の、名前だったりした?」

唐突に、空見は言った。脈絡の欠片も無い。名字が一緒だからだろうか。
何にせよ、勘違いしているなら好都合。

「………あぁ。悪、かったな」

彼は肯定した。そして謝罪。普通はそうするのだろうと思ったから。

「…そっか。教えてもいない兄弟の名前、知ってたら吃驚するよね。そりゃそうだ。」

納得するんだな。怯えた目も消えた。どうやら人間関係的には問題無いらしい。言うなら今か、と中原は口を開く。

「あーーっと、今の誰にも言わないでくれるか。異常兄弟愛(ブラコン)とか、周りの奴らに知られたくねぇし、さ。」

「大丈夫、言わないよ。言う前に忘れちゃうから。」

「そりゃ安心だ」

クスリ、と二人で笑って今度こそ梯子へ足を進める。

「じゃあまたな、空見。」

「ごめん、」

何故謝られる。振り向くと、それは謝罪の意味ではない事が直ぐにわかった。苦笑いだったからだ。先程の純粋な笑顔は何処へやら。空見は憂いを帯びた表情で言った。

「僕の事、名字で呼ばないで。あだ名か、名前にして。」

それは要求だった。それも、かなり強制力のある。そう言えば江口も彼の事を『ミィ』と呼んでいた気がする。中原は素直に従った。

「わかった、何て呼べばいい?」

「そうだね……名前そのままがいいな。」

「……じゃあ、またな。ナガル。」

「ありがとう京雅。またね。」

笑顔で軽く手を振るナガル。中原は今度こそ、図書室に向かった。

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悠誠(プロフ) - コメント下さると嬉しいです!リクエスト等ありましたらお申し付け下さるととっても喜びます!! (2016年10月4日 15時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 再開します! (2016年8月16日 16時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - なんか更新出来ました (2016年8月14日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 帰省の為Wi-Fiが繋げないので更新が16日まで出来ません。申し訳御座いません (2016年8月13日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 中原さんを軽率にオバケ苦手キャラにしてしまった……なんか体術が得意な人って物理攻撃効かない物(代表:幽霊)に苦手意識ある気がしませんか?国木田さんもそうですけど。(社長はその後光で幽霊さん浄化される。(確信)) (2016年8月8日 19時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠誠 | 作成日時:2016年6月26日 19時

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