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16その日の放課後 ページ17

「………駄目だ。」

中原中也(・・)は革張りのソファに身を横たえると、照明の明かりを避けるように顔に帽子を被せた。

……クスリの売り手の情報が全く掴めねぇ。
江口の話を使って売り手を割り出してやろうと思ってたが……

既に中原は数人の買い手を見つけている。彼らを脅しても売り手の情報は全くと言っていい程無かった。…無かった、と言うよりは会話にならず拷問も意味を為さなかった、と言った方が正しいか。

こっちの目的をーーーークスリ売りを探してるって事を言わねェで彼奴を使うのは限界がある。
かと言って一般人に任務を晒す訳にも行かねぇし……

「江口………彼奴はもう必要ねェか。」

折角、空見を紹介してくれたトコだったけどな。
彼奴の言う通りだーーーそう、あの関係は仕事であって、[ナカヨシコヨシ]ではないのだから。
帽子によって生み出される心地良い黒に視界を包まれながら、そっと中原は目を閉じた。



高校から徒歩30分、自転車で10分の場所にあるボロアパート。膝くらいの高さの机、敷きっぱなしの布団、制服、そして起動されたノートパソコン以外目立つ物の無いその部屋で、江口Aはスミャホを耳に当てた。

「ーーもしもしリュウさん?」

柔らかい、絶対に学校では見せない笑顔で電話の向こうの相手に呼び掛ける。

「仕事中だった?ーーよかった、皆元気にしてる?」

「ーー、そう、松本さんが……うん、夏休み御墓参りに行くよ。代打は誰?
ーーー女?」

目を丸くして、口元に手を持って行った彼はその名前を聞いて軽く首を傾げた。

「ーーへぇ、ヒグチさんか。帰ったら【観】たいな。ーーえ?いや、大丈夫だよ。楽しい楽しい学校生活ですハイ。ーーあはは、そんなしてないってば。友達も出来たし。ーうん、うん。じゃあね、はーい」

ピッ、と赤い通話終了ボタンをタップする。軽くため息をついて、独り言。

「親に嘘を吐くというのは、この感覚か……」

そして彼は微笑んだ。今日撮った中原京雅の阿呆面の写真を見つめて。

5秒タイマーをセットしておいてカメラを投げ、それを見て慌てる顔を撮るのは我ながらなかなかの名案だったな。
そろそろ、【何のヒントも得られない江口と一緒に居る必要は無い】と考え始める頃かーーーー

「ーーー明日辺りが頃合いかな。」

「待ってて、リュウさん。もう直ぐ心配かける事も無くなるから。」

ボロアパートの一室に備え付けられた小さな風通しの悪い窓から、彼は黒に浮かぶ月を眺めた。

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悠誠(プロフ) - コメント下さると嬉しいです!リクエスト等ありましたらお申し付け下さるととっても喜びます!! (2016年10月4日 15時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 再開します! (2016年8月16日 16時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - なんか更新出来ました (2016年8月14日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 帰省の為Wi-Fiが繋げないので更新が16日まで出来ません。申し訳御座いません (2016年8月13日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 中原さんを軽率にオバケ苦手キャラにしてしまった……なんか体術が得意な人って物理攻撃効かない物(代表:幽霊)に苦手意識ある気がしませんか?国木田さんもそうですけど。(社長はその後光で幽霊さん浄化される。(確信)) (2016年8月8日 19時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠誠 | 作成日時:2016年6月26日 19時

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