8話 ページ8
「いいよ、捻挫くらい」
夏油達の高校時代なんて今より忙しかったから、「あばらいったわ」とか「腕折れた」とか言いながら自分で帰ってきて硝子が戻ってくるのを待つのもザラだった。
捻挫なんて私も夏油たちも
ほっときゃ治るくらいのノリだったのに。
机の引き出しからテーピングを引っ張り出して、ベッドに座った私の前にしゃがむ夏油にそう言う。
「それに自分でやれるし」
「私がやりたいんだ、いいだろう？」
「…。」
…これが女タラシの正体か！！
治まった筈の顔の熱がぶり返す。
「…呪言師の彼と、仲良いんだね」
苦笑いしながら顔を背けていると
私の足に目線を落としながら少し拗ねた口調でそう言われた。
…え？
何だ？
「…棘ね、狗巻棘」
「…そうだったね、
君はコッチの同期は名前で呼ぶんだな」
…は？
ちょっと頭の整理が追いつかない。
何を言っているんだ、君は。
「あのー…夏油さん？」
それ、嫉妬ですか？
思わず口をついて出てしまったその一言に、ピタリと手を止めた夏油が顔を上げた。
視線がぶつかる。
そして、数秒の沈黙。
何か考えた風の彼はようやく口を開いた。
「…そうだと言ったら？」
「……え？」
真剣なその瞳から目が反らせない。
しばらく固まって見つめていると、夏油が笑った。
「はは、冗談だよ。
君と1番仲の良い男は私だと自負してたのに、彼が親友だと言うからさ。」
どこら辺が冗談なのかわからないんだけど。
できたよ、と言って捲ってたズボンの裾を下ろす所までやってくれる目の前の28歳。
…私が好きだった人。
「友達が取られた気分だよ、全く」
「あぁ、そういうこと…ね」
冗談めかして「友達」という言葉を選んだ彼に我に変える。
友達、ね。
ガッカリした自分がいるのは気のせいだ。
硝子に声かけておくから、そこにいなよ
と立ち上がった彼の顔を目で追うと
今度は見下ろす形になったその表情が目を細めて微笑む。
「そういうこと、って。
Aは何だと思ったの？」
「っ…！」
今度は即座に顔を反らしてしまう。
コイツ…！
わざとそういう言い方したな、私をからかうために。
「私で遊ぶな！！
バカやろう、さっさと出てけ」
「はいはい、ごめんね」
楽しそうに笑う夏油はドアまで行くと
「私はまだ若いからね、A」
とだけ言って出ていった。
「なんなの…アイツ」
火照った頬はしばらく治まらなかった
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アリア(プロフ) - おとても、好きなお話です。更新楽しみにしています。 (2022年9月13日 7時) (
レス) @page19 id: a6acf319a5 (このIDを非表示/違反報告)
莉乃(プロフ) - すごく面白いです〜！！もう、大好きです❤️♥️❤️ (2022年2月25日 11時) (レス) id: d96deb1772 (このIDを非表示/違反報告)
皐摩(プロフ) - 好き！！！！！！(クソデカボイス) (2022年2月16日 18時) (レス) @page16 id: c69f5fedc2 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - あぁなんて素晴らしき作品♡♡願わくばこのまま幸せにイチャイチャしていて欲しい♡♡続きがとっても気になるけど夏油さん推しとしては幸せになれただけでも良しかなって感じもします！ (2022年2月15日 0時) (レス) @page16 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - もう幸せすぎてニヤけが止まりません！こんな神夏油さん作品を作ってくれてありがとうございます！ (2022年2月15日 0時) (レス) @page4 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぬし | 作成日時：2021年8月29日 19時
