私を舞台につれてって・2 ページ5
*
新入生歓迎会は、入学してから割とすぐだった。
生徒会の張り切ったパフォーマンスに始まり、予選とやらを勝ち抜けた各部活の勧誘が続々と続く。
最初の方は運動部で、サッカー部は部長が簡易ゴールにシュートを決める、バスケ部はダンクシュートとスリーポイント、野球部はエースの豪速球……と、数分という限られた時間でなかなか見応えがあった。
「甲子園まで連れてってくれる美人マネも募集してまーす！」
「アホっ、俺達が連れて行くんだろ！」
そんなコントが笑いを誘い。続けて、文化部。
当たり障りのない内容だった。声楽部のコーラス、美術部の超大作発表、放送部のミニコント。新聞部はけっこう過激で、ちゃっかり宣伝なんかもしていた。
一通りの発表が終わり。
どんなに面白くても、見る方もやっぱり疲れてくる。ざわざわとした一年生の前で書道部が書道パフォーマンスを行い、それで選抜の勧誘は終わりかと思われた。
書道部がステージに揃って礼をし、司会の声が流れる。
『書道部の皆さん、ありがとうございました。発表は続きますが、準備のためここで休憩時間とさせていただきます』
トイレ水飲みは生活階へ――。その放送にほっとした空気が流れ、A組から順番にぞろぞろと席を立っていく。
私も喉が乾いたから、B組の皆さんと言われた時に席を立とうとした。
その時。
揃いのジャージの集団は、注意深い生徒の興味を惹いていた、と思う。円陣を組んでいた。
そして、一人、声を飛ばす。
「時間との勝負！」
それで、一年生は完全に注目していた。
「本当はこんなことやってる暇ねぇ！」
「でも伝統だからしょうがない、気合入魂！」
「ファイト――」
ドンッ、と力強く体育館の床を踏む。
「浪漫学園演劇部大道具班、オーッ！」
そして次の瞬間、彼らは散り散りになった。
的確に動き声を飛ばす。人数は少ない。そして――私は見た。煌びやかな衣装を身に纏った、そんな人達を。
「時間の無駄って、自分らでよく言うよな」
「伝統、ですから。それに部長だって本来あの輪に居るべきでしょう」
「何か嫌なんだよな……大道具になってもあれだけは嫌だった」
二人の先輩と思われる人達が、体育館の隅で話している。
これから何が始まるんだろう――期待が、胸の中で沸騰していた。
*
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作者名：スマトラ島のラフレシア | 作成日時：2016年8月5日 18時
