【月刊少女野崎くん】世界は一度に動き出す。【番外編集】 (ページ28)

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聖夜の贈り物・2 ページ28

*

私のうちにはよく叔父さんが遊びに来てくれていた。母とは二つ年が離れていて、結婚はしているけれど子供がいないからよく私に構ってくれていた。

――肌寒い師走の夜も、そうやって気まぐれに遊びに来て父とお酒を飲んでいた。

「Aはサンタクロースに何か頼んだのか？」

ほろ酔い気味の叔父さんにそう聞かれて、小四の私はムッとしながらぼそりと答えた。

「……そんなの子供みたいじゃないですか」

「ははは。いいんだよ子供なんだから。姉さんもまだ"信じてる"みたいだし、ちょっと演技しとけ」

親とは違う、近いところにいる大人のひと。そんなふうにあっさりぶっちゃけちゃうもんだから、うわあ、と両親に悪く思った。

で、何頼んだんだ、と急かされるので渋々答える。

「……新しいスポーツバッグ。今使ってるやつはちっちゃくなっちゃったから」

「へえ。ああ、そうだ誕生日は？」

「誕生日はシューズを」

叔父さんが遊びに来たのは12月の頭くらいで、ちょうど街が季節の装いを始めた頃だったと思う。

*

「瀬尾先輩」

「うおっなんだ」

急にガタンとボールのカゴを鳴らした私に驚いて、先輩が大袈裟にのけぞる。

お前目が怖えよと言われたので瞬きしてから、勢いのまま私は喋っていた。

「わかりました」

「何が」

「私がボール磨きをする理由」

はあ……？と首を捻っているから、まさかこの人さっきの会話忘れてんじゃないだろうかと心配になる。けど。

「ボールって凄く大切にできるんです」

「…………」

「学校の備品なんて古いやつずっと使ってるじゃないですか。だからボロボロだけど、大切にしたら全然まだまだ使えて」

そのままずるずると喋り続けるのを、先輩は興味なさそうな相槌で聞いていた。

……別にいいんですけどね。ちょっとばかし乱暴でも、その競技に使われる限りボールは幸せだと思うから。あなたに言ってるんです瀬尾先輩。

*

クリスマスの朝、どう見てもスポーツバッグが入っている袋の横に、包装されている四角い箱を見つけた。
怪訝に思いながら包装紙を剥ぎ取って、

あ、と思わず声を出した。

――新品のバスケットボール。それがどこか、腑に落ちていた。

サンタクロース。

そういえば学生時代にバスケをしていたような気がする彼からのプレゼントは、今も背の伸びない私の鞄の中に、毎日磨かれて入っている。

*

メリクリ。サンタはもう来ない。

12.25

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