シンデレラ・3 ページ21
舞踏会も賑わってきた頃、王子はまだまだぐずっていました。
「何であんなにいっぱい来てんだよ……もう帰ろよ……」
「まだ言ってるのか。そろそろ腹を括ったらどうだ」
「あっ野崎！今の今までどこに行ってたんだよ!!」
「ちょっと魔法をかけに」
「は？」
一方、舞踏会の会場では千代がガッカリしていました。
「…………」
「遅いわね、王子はいつ出てくるのかしら」
「王子が出て来ないと側近の人も来ない……」
「え？」
そんなこんなのうちに、ようやくAがお城につきます。Aはヒールのついた靴なんて履いたことがなかったのでちょっと足元がおぼつきません。
「マズイなあ……これじゃ踊るどころか綺麗なお姉さんに声もかけられない……」
ふとお城を見上げると、ガーデンテラスが目に付きました。
どこかのアニメの聖地によく似ていました。
「あっ！ そうだ、あそこに居よう。時間までお城に居れさえすればいいんだから、あそこで時間つぶしたらいいよねー」
姑息な考えのもと、Aはガーデンテラスに向かいます。
そして何の偶然か、耐えきれなくなって会場を離れた王子もそこに向かっていました。
「ったく野崎のやつ……俺が人見知りなの知ってんだろ……」
そうとは知らないAも、ブツブツ呟きながら足を進めていました。
「ああ……やっぱり似てるなあ。あのブランコとか名シーンに使われたやつじゃない」
知らず知らずのうちに、御子柴王子の独り言も重なります。
「それにしたってリクエスト受けてくれるとはなぁ……自分で聖地を作ることになるとは思わなかったぜ」
「気持ち悪いくらい一緒なんだけど……花の位置もドンピシャ……」
「やっぱり10話は神回だよな……！ようやく出会った二人だったし！」
「あー、見えてきた。10話で出会って言うんだよね、主人公」
そして。
「「『選ばれて良かった……』って」」
ぴったりと声が重なったことで、お互いに相手の存在に気づきます。
同志の予感を感じ取ったオタク二人は、つい自分の立場を忘れて叫びます。
「お前見てたのか!?」
「結構マイナーだよね!?」
「もうグッズ出てねぇもんな!?」
「ちなみに推しは!?」
「「聖歌隊!!」」
一瞬で意気投合した二人は、興奮のままとにかく喋りまくりました。
舞踏会のことも、立場も、シナリオも、台詞も忘れて。
一段落がついた頃、王子は感慨深いため息をつきます。
*
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作者名：スマトラ島のラフレシア | 作成日時：2016年8月5日 18時
