【月刊少女野崎くん】世界は一度に動き出す。【番外編集】 (ページ14)

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【演劇部】Trick so Treat?・1 ページ14

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「――昔々、あるところにですね。こわーい魔女がおりまして」

ちょっぴり怖い顔をしてみせて、それからふふっと笑う。

「彼女は悪さばかりするひとだったのです。ですから、周りの者はみんな、彼女を疎ましく思っていて――」

でも。

語る口調を変えて、そう言った。

「一人の子供が、彼女に言ったのです。

――Trick so Treat! ……と」

*

「だからいいじゃないですか！」

「だから駄目だっつってんだろ」

ぶーっと口を尖らせると台本ではたかれる。おおミスター、それは大事なものではなかろうか。

10月30日の部室で。大体の部員が講堂かホールで各自の仕事をしている間、私――上代Aは堀部長と相談をしていた。

……まあ、相談、といったって、私が一方的に持ち掛けているだけなのですが。

「一生のお願いですよ～。もうこれ以上何も私は求めないので」

「…………」

「ちょっっとだけでいいんです、本当に。あとは何とかしてみせますから」

「……だからってそんなの、色々面倒だし何が起こるかわかんねぇだろうが」

「ご安心ください」

渋い顔をする堀部長の前に、どんっとフリップを立てて見せ、私は手元にあったシャーペン(たぶん高木くんの)を指し棒がわりに使う。

「いいですか、堀くんももう一度私の説明を聞けば気持ちが変わるはずです」

「何度やっても一緒だろ……」

「黙って聞いててください！それでは、まず――」

「堀ちゃんせんぱーい！」

ガダァンと突然開いた部室の扉。切羽詰まったような声がした時、私は条件反射でフリップを机に伏せていた。

「どうしたんだ、鹿島」

「それなんですけどね……」

珍しく、少し慌てている様子の鹿島くん。部室に足を踏み入れながら部長に話す。

「講堂で練習していたんですけど、坂巻先輩と……って、ああっ！」

「は、はいっ!?」

急に鹿島くんがこちらを見て声をあげた。慌ててフリップをばれないようにするけれど。

下手すると舞台に上がる時よりも緊張している。

「A先輩ここにいたんですか!? あー伝えればよかった……」

「ええと……？」

「とにかくっ来てください！あ、堀先輩はもういいですよ！」

「てめぇ……」

「もういい」と言われたのが気に障ったのかイラッとしている部長から慌てて逃げる。

……その途中で、思い出した私は顔だけ部室に覗かせた。

「あのこと、考えておいてくださいねー！」

「…………ああ」

*