【月刊少女野崎くん】世界は一度に動き出す。【番外編集】 (ページ13)

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夜更けとサーベル・2 ページ13

*

都会の夜は24時間営業のコンビニが目立つ。

そして、それらは一箇所になぜか集まっている。

今夜もどちらにしようかなと迷って、決めた方でおやつにまた迷って、宮前くんへのお土産で迷って……と数十分を潰せた。

たらいまぁ～と呑気にまた扉を開く。

「いやー便利なことこの上ないね。期間限定で二種類あったから好きなほう選んで」

「……そこに置いといてください」

「はいよっと」

ガコン、二本のペットボトルが入った袋を二人の机の間に置く。

ミニロールケーキの包装を開けながら、私はぼんやりと呟いた。

「……デパ地下のケーキ食べたい」

「…………」

「モンブラン恋しい……ねえ宮前くん知ってるもう秋なんだよ……」

「……知ってます」

あのおっきい栗がのったモンブラン食べたいな～と聞こえよがしに言おうとも、宮前くんの反応はまるでなし。

……知ってる。ちょっと言ってみただけだし。

機械的にパソコンをカタカタやっている宮前くんを横目で見る。

暇すぎて死にそうだから仕事ちょうだい、なんて言ったらやっぱり口利いてくれなさそうだもんなあ。どうしようか。

生クリームを味わいながらむすっと考えていると、突然宮前くんが立ち上がった。

「……え、何？」

「何って、コピーとりにいくだけだろ」

「あっそう……」

コピー機は部屋の隅っこにある。

ガーガー紙を吐き出す音を聞いて、そういえば夜の建物って雰囲気あるよねと思った。

夜の学校とか。肝試しとかしてみたかったなあ。

「ねー宮前くん、ちょっと肝試ししない」

「仕事場だぞ」

「ちえっ」

二時間ほど後になって、二本の電話で走ることになるなんて――

わかっているようでわかっていなくて。

それでも確かに流れていく、静かな夜のなんでもない時間帯。

この瞬間が、好きだ。

*

「……宮前くん、知ってる？」

「何が」

「出るんだって……」

「……は？」

「そう。出るの。何でもモンブランを食べたくて仕方なくて同僚におねだりしてもおごってもらえず、ついに命を絶やした女性社員の霊が……」

「出るか」

*

剣さんは敬語ログアウトもログインもはやいです。何かもう本当に気分じゃねえのってレベル。

本当は登山に行ってもらう予定だったんですけど、そういえば〆切で残業する話が書きたかったのに本編では書けなかったな、……と。

というわけで剣さんおめでとうでした。大好きです。

9.22

next…Happy Halloween!