#02【 條原 涼 】 ページ2
「夏はなぁんで暑いんだろうねぇ」
そう呟いて、コンビニの物陰に胡座をかいて座る。そして、べりっと勢いよくアイスの袋を開けてひと口。口内にひんやりとした冷気が漂った。
「夏が暑いのは自転軸が関係していて、自転軸が傾くと地球が太陽のまわりを回って動きます。そうすると──」
誰に言ったわけでもない呟きを、ウチの頭脳様は聞き逃さなかった。頭上から声が聞こえて、朱里が何かをぺらぺらと話している。
うーん、1mmもわかんないなぁ。
隣を見ると、さやも俺同様に全く意味を理解していない様子だった。
段々朱里の声が子守唄に聴こえてくる。ふぁ、と欠伸をしたところで、道行く女子の視線を独り占めしている王子様が声を出した。
「あ…そういえば夏休み明けにテストあったよな」
「え」
真砂が何食わぬ顔で衝撃的な言葉を告げた。
何それなにそれ初耳なんだけど。先生俺にそんな事言ってたっけ…!?
「涼、もしかして知らなかったの?」
「だって先生俺に何も言ってないよ!?」
「普通言わなくても分かるでしょー」
2人の先輩は呆れている。視界に見えた朱里なんか、心底有り得ないとでも言うような顔でこちらを見ている。
仕方ないじゃん、ホントに知らなかったんだからさぁ!
「んにしても珍しい。涼って別にテストあっても焦ったこと無くない?」
「此奴、次のテストでオール赤点だったら真面目に退学かもしれないんだってさ」
「うわ…」
「ちょっと朱里ぃ!聞こえたからね!?うわ…って何!?」
いつの間にか食べ終わっていたアイスの棒を朱里に向かって投げつける。朱里はそれを難なく躱した。
「人に向かって投げないでください。それにしても、流石にそれはヤバすぎです。勉強してください」
グイグイと朱里に背中を押される。どうやら早く帰って勉強しろということらしい。
でも今更帰って勉強したところでテストの点数はあまりいつもと代わり映えしないような気がする。
なぁんか、簡単に点数取れる方法無いかなぁ…。
あの昔見てたアニメの暗記するパン欲しいなぁ。でもあれ存在しないよなぁ。
……あ。
「あのさ!こーゆーのどう!?」
さっすが俺。
これは名案でしょ。
「──夜の学校忍び込んでテストの答え盗も!」
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