転生者は、苦悩する Lv.1【イナズマイレブン】 (ページ20)

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第018話・これもまた運命…？ページ20

その日から円堂は、サッカー部への助っ人を呼びかけ出した。

「まったく…いつもいつも、騒がしい奴だよ…君は」

　木陰から色んな人に呼びかけまくる円堂を見つめる。
　練習試合であれば私も出れるし、実質助っ人は三人で足りる。だが、何が起きるか分からないのも事実だ。一応万全を期しておこう。

「A～！」
「風丸」

　彼がランニング中に私の存在に気付きこちらへやってきた。

「いいの？陸上部のエース。サボって」
「休憩だよ。…帝国と練習試合だってな。学校中の噂だぞ」
「まあね、仕方ないよ。40年間無敗のチームが練習試合とはいえ、ここへ来るんだもの」
「気楽だなAは」
「そうかなあ…」

　人が言うほど気楽な性格はしていないつもりだけど…。
　イギリス仕込みだが、サッカーには自信がある。致命傷にならない程度に適当に受け流して、帝国から2点くらい取ってもいいよね。と思っている私だ。
　私も、父にサッカーしているのを見せるのは初めてだ…だから正直、嬉しいような緊張で高ぶっているような…不思議な感覚だ。

「私…今回の試合、勝ちたい…」
「！」
「…勝って、見てほしい…」

　円堂はおじいさんである大介さんのサッカーがあって、鬼道にはあの人からの教えらたサッカーがあって、豪炎寺には家族の絆を結ぶサッカーがある。…けれど、私には何もない。目的もなにも…今あるのはあの人に認めさせて、私を見てもらうことだけ。

　私は人望がないため呼びかけをしたところで集まる人間はたかが知れている。だから、助っ人の呼びかけは円堂に任せよう。
　そうして河川敷の橋の足で壁当てでもしようと思い向かう。
　その道中、猛スピードでトラックがこちらへ突っ込んできた。避けようとするが、足元に転がっていた空き缶に足を取られ躓いた。

　――う、うそ……避けきれないっ…

「危ないッ…！！」
「？！」

　グイッと力強く腕を引かれ歩道へと戻される。
　ガシャーンッとトラックが電信柱に勢いよくぶつかった音が妙に耳に残り、私は腕を引いてくれた人の胸に顔をうずめるような形になっている。
　命の恩人であるその人の胸の奥はバクバクと心臓の音が大きくなっていた。――きっとかなりビックリしたのだろう。私もそんな感じだ。

「う…っ…」
「大丈夫か…？ ……お前は、昨日の…」
「…え？」

　私を死から救い上げてくれた命の恩人は、なんと豪炎寺修也だった――。