転生者は、苦悩する Lv.1【イナズマイレブン】 (ページ47)

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第043話・豪炎寺のサッカーページ47

どうやらあの一回の自己紹介で名前を憶えてくれているようだ。
彼は自己紹介以来私の名前を一言も呼んでくれないため、
覚えてくれていないのかと思っていた。
橋の手すりに凭れ掛って豪炎寺と共に練習をしている円堂たちを見つめる。

「…すごいよね、あの子たち。君に触発されて、あんなに頑張っている」
「……」

って、バカバカっ！そんな話をしに来たんじゃないって！
円堂たちを見つめたまま黙っている豪炎寺。

「ここ君の通学路だっけ？」
「……」
「君と妹さんのこと…」
「…円堂が言ったのか」
「彼はそこまで無神経じゃないよ。…つけたの、ごめんね」

そう。あの日、私は円堂が豪炎寺のサッカーを辞めた話を病室の外から聞き耳を立てていた。
私が以前鬼道と会った時の「とある用事」とはそのことである。
彼は「趣味が悪いな」と眉を吊り上げ、ここから去ろうとする。
━━━━知られたくないことを円堂だけでなく、私にも知られたことに腹を立てるのは分からないでもない。

「君らしくもないじゃないか、サッカーから逃げるの？
　円堂たちと一緒にサッカーがしたいから、サッカーが好きだから…
　サッカーに対しての情熱を君は忘れていないし、
　忘れられないからここを通っているんじゃないの？」
「ほっといてくれ。…お前に何が分かる…」
「サッカーを辞めることが、彼女に対しての償いだなんて冗談も甚だしい。
　君のプレーを、君のサッカーを一番大事に思っているのは、誰なの！」

柄にもなく私は子供に対して説教をする。
子供だ子供だなんて思っていても、彼らはすぐに成長する成長盛りの中学生。
それを促すのは大人の役割だ。
誰よりも、彼のサッカーを愛しているのは、
妹の夕香ちゃんだって…豪炎寺自身が気付かないといけないんだ。

「……夕香…！」
「フッ…。行ってこい、豪炎寺」
「！」

彼の背を強めに押して下にいる円堂達の元へ行くよう促した。
彼は申し訳なさそうに、微笑を浮かべながらまだ少し、
重い足取りで河川敷へと降りて行った。

「はぁ……」
「なかなかの説教だったわね」
「聞いていたんだね、夏未サン？」

黒塗りの高級車が横付けされ窓から顔を覗いたのは雷門夏未だ。
元々このシーンは夏未が豪炎寺を説得するはずなんだけど……
なんでか、物語は私をここへ誘った。彼女の役目を取るほど、
私はそこまで重要な役柄だろうか━━━━