転生者は、苦悩する Lv.1【イナズマイレブン】 (ページ16)

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第014話・廃部と留学の噂ページ16

ボール一つを脇に抱え、勢いよく部室の扉を閉めた円堂。その勢いの所為か「サッカー部」と彫られた木の立て札が落ちそうになったのを円堂がギリギリで受け止めた。
　そんな中部室では――

「なに一人で熱くなってるんだ？」
「頑張ってもしょうがないさ…もうすぐ廃部って噂もあるからし。Aには留学の話が出てるしな」
「「は、廃部ー？！」」

「Aさんの留学って…？！」
「アイツの祖母、イギリス人なんだよ。小学のときも一時期留学してたって話だし…」
「う、うそだろ…？」

「残念ながら、本当だよ」

　私はゆっくりと部室の扉を開いた。私の声を聞いてか一年生の子たちが「え」と首を傾げこちらへ視線を向けた。

「そんな…」
「じゃあ先輩…いなくなっちゃうんですか？」

　落ち込む半田と宍戸。私が留学の話が出ているだけで、留学する気はないと話せばパァッと明るい表情になる。――調子のいい奴らだなあ。
　染岡もそうだが、栗松や宍戸、少林も制服からユニフォームに着替えているあたり愛着はあるようだし…本当に廃部になってから、彼らはサッカー部の居心地のようさを理解したんだろう。

「サッカー…」
「？」
「嫌いじゃないんでしょ？シュートを決めること、パスと繋ぐこと、ドリブルをすること」

　私は尋ねれば目を逸らすサッカー部メンバー。
　分かっているんだ、本人たちが一番。けれど分かっているんだ…。そんな自分に期待できないこと。お先真っ暗なのに今やる意味があるのかを。
　円堂の熱血は痛々しいほど真っ直ぐで、常人じゃ理解できない面がある。けれどそんな彼だからついて行きたくなる。それを一番知っているのは今いる雷門サッカー部のメンバーだ。

　単純な話、円堂について行くかは彼ら次第ってだけだ。

「じゃあ私は河川敷に行くからね」
「ああ」

　唯一の女子部員である私は、校内にある女子更衣室で着替えてからここに来る。正直言って着替えるのは面倒なので、帰りはほぼユニフォームの上にジャージを着て帰宅すると言った感じだ。時間があれば着替えるのもやぶさかではないが。

　河川敷で円堂と合流する。

「円堂～！」
「おぉA！」

　すでに円堂は稲妻KFCの子供たちとサッカーの練習をしていた。

「精が出るね」
「おっさんみたいな言い方するなよ」

　いやねぇ、君を見ていると自分の子供のように思えてくるんだよ。まあ無茶ばかりされたら、円堂のお母さんも気が気じゃないだろうけど。