Not Alone… (ページ17)

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st黒

「ん！」

「…え？」

「ほーら、ここ来て！」

大の大人が何をしているんだ。

ドライヤーを持ってきた樹はソファーに腰掛け、足の間に座れと笑顔で示してきた。
流石にこの歳になって美容院以外で人に髪を乾かしてもらうのは恥ずかしい。

でもこのままでは風邪をひきそう。ここは素直に甘えることにした。
程よい力加減の手が髪の間をすり抜け暖かい空気が当たり、顔に掛かる髪がくすぐったい。

「ありがと。気持ち良かった。」

「どういたしまして。」

「樹の髪、俺がやろうか？」

「いーのいーの。お前はお客さんなんだから。」

そう言うと自分の髪の毛はバサバサと適当に乾かし始めた。髪色もしょっちゅう変えるんだから、頭皮を大切にすれば良いのに。

「おし、こんなもんでいいや。それじゃ飲もうぜ！」

冷蔵庫から缶ビールを2本取り出した樹は、1本を俺に手渡してから戸棚からつまみを持ってきた。

ﾌﾟｼｭｯと音を立ててプルタブを開ける。ビール特有の香りが鼻を通る。

「かんぱーい！」

「乾杯！」

アルコールが喉を通るのが分かる。久しぶりに飲む酒はやっぱり美味い。