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「悠馬くん」
僕の名前を、呼ぶ声がした。
弱々しい、けれど迷いの無い澄み渡るような声。
鳥がついばんでいるように、シャツの裾がほんの少しだけ引っ張られる。思わず全身に力が入った。
その手を振り払ってしまわないように、そっと背後に視線を投げる。宝石が幾つもの光に輝くように、瞳は陽を反射して彼女の笑顔を彩った。
扉が開いたことに気が付かなかったことに言及も出来ず、僕の口からは君の名前が溢れる。
「烏丸さ、ん」
確かに目の前には彼女が立っていた。成長して、少し大人びた顔立ちで小さく笑顔を浮かべて。
昔のように、僕の名前を呼んでくれる。残念ながら僕は、思ったように笑って見せられなかった。
「声、いつから…」
「…少し前に。秘密にしてたんです、一番に聞いて欲しくて」
僕の喉に言葉がつっかえる。鼻の奥の方でツンとした痛みが走って、口元を隠すように手の甲を鼻先に押し付けた。
じわり、目頭から熱が滲んでくる。涙を浮かべるのだって久しいのに、こんな感情で視界が歪んでしまうのは初めてかもしれない。
目の前の君が慌て出す。情けない顔をしてしまっていただろう。僕も内心焦ったよ。
「…ごめん、嬉しくてさ」
余裕な風に装うと、自然と熱さは引いていく。けれど目の前の君はまだ心配そうに僕を見つめていた。
「その笑顔も声も、戻ってきて本当に良かった。こんなにも早く烏丸さんの声を聞くことができるなんて。君は、本当に強いね」
「皆さんのお陰です。…悠馬くんは、ずっと私を支えてくれました。私、沢山…迷惑をかけたのに」
「迷惑なんて一つも無かったよ。…僕は好きで君の側に居たんだ」
僕は片手を伸ばし、君の肩を抱き寄せた。不意打ちなんてズルいかなと思ったけれど、これ以上頼りない顔は見せたくなくて。
「僕が側に居ることを許してくれて、ありがとう」
「…私も」
こんなにも近くで君の柔らかな声が、吐息が聞こえる。温もりが僕の腕の中にある。
今度は無我で伸ばした腕ではないから、全てを確かに感じることができる。君が頬を擦り寄せてくれるのも、定位置を探していた君の手が、僕の背中に回ってそっと抱きしめてくれるのも。
「また助けてくれて、ありがとうございます」
僕は君の首筋に頬を寄せる。目の端から堪えきれなかった涙が零れた。
君はまた僕に感情を教えてくれる。僕の世界を鮮やかにしてくれる。ちゃんと君にも、この幸せは伝わっているかな。
ラッキーカラー
あずきいろ
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かなり - 私、輝さんの小説が大好きでいつも読み返していて、勇気をもらっています！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 698341d95b (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - かなりさん» 沢山のコメントありがとうございます！本当に励みになります(*^^*)かなりさんも、どうか体調にお気をつけて過ごしてください。 (2020年4月26日 18時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - この小説は、私を感動させてくれる小説です！この小説を作ってくれてありがとうござます！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています ！ (2020年4月20日 11時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - もお、続きが気になり、この後の展開が気になり過ぎて、ドキドキしながら読んでいます ！(≧∀≦)これからも、体には気をつけて、頑張って下さい！応援しています。！ (2020年4月14日 21時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - コメントありがとうございます。これからも頑張ってください (2020年4月10日 14時) (レス) id: dd5b3632db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝 | 作成日時：2019年8月8日 23時
