第七章 ｾｲﾁｮｳ ページ33
あの日は色々と運が良かった。野坂が思考を巡らせていたところ、目当ての少女が戻ってきたので直接話をすることができたのだ。
「茜さん」
「お待たせ、野坂君」
「ごめんね、呼び出しちゃって」
「ううん。こういうの初めてだから、ちょっとビックリしたけど」
「茜さんと会うことを灰崎君が許可してくれたことに、僕は驚いたけどね」
宮野茜は灰崎の幼馴染みであり、野坂と同じアレスの天秤プログラムの被験者でもあった。
中学生の頃はこのプログラムの欠陥を暴くべく彼女に協力を要請し共に戦った、言わば仲間でもある。
「それで、突然どうしたの？」
艶のある黒髪を緩く束ねた宮野は、少し大人びたように見えた。
ただ、敬語や堅苦しさが無いとはいえ、中学生と高校生という境界が出来たことで若干の距離感が生まれたように感じられた。
野坂は店員にメニューを渡して会釈すると、はっきりとしない表情で宮野の方を見る。
「実は、この間アレスプログラムの被害者がまた一人見つかってね」
「え…去年の時点で、もう全員が保護されたんじゃなかったの？」
「一人だけ集めたデータに名前が載っていなかった被験者がいたんだ。早急に手を回して、今は総合病院で治療を受けている」
宮野はそれを聞いて安堵の表情を浮かべた。この報告は重要だが、野坂にとってこれだけが今日の目的ではない。
寧ろ、これは前置きにしか過ぎないのだ。
「…それで、ここからが本題なんだけど」
「うん…」
野坂は躊躇うように一呼吸置く。宮野は何か深刻なことなのだと察し、唇をきゅっと結んだ。
ここで、張り詰めた空気を崩すように店員の声が割って入ってきた。手際よく動く腕越しに宮野が戸惑った顔で野坂を見たが、彼は小さく笑って店員に礼を言った。
店員が去ると、野坂はまた真剣な表情に戻る。
「単刀直入に言うね」
「…うん」
「僕の予測が正しければ…恐らく、僕は彼女に好意を抱いているんだ」
「…え？」
予想外れな話題。宮野は変わらず真っ直ぐに自分の目を見る野坂に圧倒され、暫く上手く言葉が出なかった。聞き間違いかとも疑った。
「彼女って…その、被害者の人？」
「うん」
「で、好意っていうのは…」
「恋愛感情と考えて良いと思う」
「…じ、じゃあ野坂君はその子が好きになっちゃったってこと…？」
野坂は照れるでもなく、重々しく一度だけ頷いて見せた。
この二人の間に、完全な温度差があった。
ラッキーカラー
あずきいろ
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かなり - 私、輝さんの小説が大好きでいつも読み返していて、勇気をもらっています！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 698341d95b (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - かなりさん» 沢山のコメントありがとうございます！本当に励みになります(*^^*)かなりさんも、どうか体調にお気をつけて過ごしてください。 (2020年4月26日 18時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - この小説は、私を感動させてくれる小説です！この小説を作ってくれてありがとうござます！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています ！ (2020年4月20日 11時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - もお、続きが気になり、この後の展開が気になり過ぎて、ドキドキしながら読んでいます ！(≧∀≦)これからも、体には気をつけて、頑張って下さい！応援しています。！ (2020年4月14日 21時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - コメントありがとうございます。これからも頑張ってください (2020年4月10日 14時) (レス) id: dd5b3632db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝 | 作成日時：2019年8月8日 23時
