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彼女は救済の対象だ。
彼女には僕が必要で、僕はそんな人間を救うだけ。
彼女が回復すれば全てが終わる。
僕らの関係は消える。それだけだ。
たったそれだけの関係だ。
刻み付けるように何度も繰り返し唱えた。階段を上がってきた野坂が見せたのは、張り付けたように完璧な笑顔だった。
「ごめんね、一人にして」
彼女はにこりと笑った。まだケーキが乗った皿には、フォークが置かれていた。野坂が元の位置に座り直すと、また細い指がそれを掴む。
待っていてくれたのだと、野坂は口を結んだ。余計なことを口にする必要は無いだろう。会話など、最低限で良い筈だ。
運良く、先程二階席に来た客の声が野坂の気を紛らせた。沈黙が、甲高い笑い声で掻き消される。
彼女は変わらず、静かに頬を緩ませて食べ進める。野坂も一度味の感想をのべた後は、ただ無言でケーキを口に運んだ。
「あの人、カッコいいね」
彼女の手を取り席を立つ時、野坂を指し示すであろう称賛に値する形容詞が聞こえた。
暫くすれば、彼女らも野坂の顔など忘れる。一時の浮かれ言葉だと、安い自分を嘲笑った。
来た道に沿って病院への帰路につく。会話は少なくなった。彼女は話ができないのだから、野坂の口数が減ればそれは必然だ。
野坂の手のひらを温めたあの華奢な手は、何の役割も無しに宙を揺れていた。彼女は時折野坂を見上げ、視線が合って首を傾げられると逃げるように前を向き直した。
十数分が立って、二人が角を曲がり病院の正面に回ってきた時、日光を反射しその艶を際立たせる高級車が、ウィンカーを点滅させ病院の敷地内へと入っていく瞬間を見た。
午後からは面会時間に含まれる為、恐らく入院患者の親族だろう。
野坂は深く気に留めず同じように正面玄関の方へと歩いた。入口までには、彼女似合わせた歩行速度では、まだ距離があった。
視線の奥に見える駐車場に、先程の車が見える。今度はその持ち主と思われる人間が、同じように正面玄関へと向かう姿を捕らえた。
野坂の足が止まる。それは、彼女の足音が消えたからだった。
「烏丸さん？」
彼女は今まで見たことのない歪んだ表情を浮かべ、その場で膝を崩した。彼女が倒れ込む前に、野坂が彼女の肩を支え抱き止める。
ほろりと、光の粒が彼女の白い頬をなぞった。野坂は目を開いた。一瞬で、頭の中が真っ白になった。
ラッキーカラー
あずきいろ
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かなり - 私、輝さんの小説が大好きでいつも読み返していて、勇気をもらっています！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています！ (2020年4月26日 20時) (
レス) id: 698341d95b (このIDを非表示/違反報告)
輝(プロフ) - かなりさん» 沢山のコメントありがとうございます！本当に励みになります(*^^*)かなりさんも、どうか体調にお気をつけて過ごしてください。 (2020年4月26日 18時) (レス) id: c19a41cb32 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - この小説は、私を感動させてくれる小説です！この小説を作ってくれてありがとうござます！これからも体に気をつけて頑張って下さい！応援しています ！ (2020年4月20日 11時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - もお、続きが気になり、この後の展開が気になり過ぎて、ドキドキしながら読んでいます ！(≧∀≦)これからも、体には気をつけて、頑張って下さい！応援しています。！ (2020年4月14日 21時) (レス) id: 591368bcea (このIDを非表示/違反報告)
かなり - コメントありがとうございます。これからも頑張ってください (2020年4月10日 14時) (レス) id: dd5b3632db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝 | 作成日時：2019年8月8日 23時
