呪いに触れる【呪鬼】 (ページ8)

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扉を閉めて改めて部屋を見渡す。

ベッドやタンス、ある程度の調度品があるだけのシンプルな部屋だった。特に扱いに困るようなものが無くてAは安心した。手に余るものが傍にあるのは落ち着かない。

ベッドに腰を下ろせばスプリングがきし、と鳴った。さらさらと手触りの良いシーツに触れ、そのまま後ろへと倒れ込む。

ぼーっと壁に掛けられている間接照明を見ていれば、何やら部屋の外が騒がしい。

Aはゆっくり身体を起こし、耳を澄ます。やはり勘違いではないようで友人達の声が聞こえた。何かあったのだろうかとのんびり扉へ寄り、ドアノブを掴んだ。回そうとした瞬間、反対側からも同時に開けられたのか扉が動く。

予期しない扉の動きにドアノブを掴んだ手を離せず、そのまま外へ引き摺り出される。

『、わ』

「おぉ！？？」

引き摺り出されたAは、目の前に立っていたコネシマに盛大にぶつかる。ドアノブを掴んでいるのも彼であるため、扉を開けた犯人は明確だった。

「なんやお前も開けようとしとったんか」

『…女子の部屋にノックも無しで入ろうとすんなや、』

鼻先に当たったコネシマの匂いに、太陽のようだ、と感想を浮かべながらAは文句を零す。そんな彼女を見たコネシマだったが「すまんすまん！！」と軽い調子で返した。これは再犯する可能性がある。

コネシマに呆れた目を向けてから廊下を見れば、他の友人達も既に集っていた。最後の私を呼びに来たって感じか、とAはひとりごちる。

『何があったん？』

部屋まで声聞こえたで、と付け加えながら言えば、トントンがAに一冊の本を差し出した。Aは首を傾げながら受け取る。

見る限り普通の本のように見えるが表紙の傷みが激しい。全体にシミがついていて、どれだけぞんざいな扱いをされてしまったのだろう。

本に哀れみを抱きながらAはその表紙を撫でた。その時、指先に何かを感じた。本から指を離して指先を見れば、何かがべっとりと着いていた。

白い指に、黒い粘液。そのコントラストに目がちかちかとした。

匂いを嗅ごうとAは指を鼻に寄せる。

もうすぐ鼻に当たるのではないか、といったところまで近付いた時、突き刺すような鉄の匂いが鼻の奥まで届いた。Aは慌てて手を顔から離す。

粘着質な液体。

鉄の匂い。

この2つが揃っていれば、コレがなんなのか…最悪の想像をするのは容易い。