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「では皆様のお部屋の方に案内させて頂きます」
会話に一区切りついたあたりで執事はそう言った。
まさか部屋まで用意してくれているとは。さっきのように椅子で座って寝る状態でも、一向に構わないのに。
「気ぃきくなぁ」
『ええんかな、そこまでしてもらって』
「まあ厚意は有難く受け取っとこうや」
ルンルンで部屋を出て行くゾムの背中を見つめてAが呟けば、後ろからロボロが声を掛ける。
「あんないい人そうやし、嘘は吐いてへんやろ」
『嘘とかは別に思ってないねんけど…』
「心配性やなぁ。俺らもおるから大丈夫やって」
生来の気弱な性格が出てきてしまったのか、もごもごとするA。それを呆れたように見つめながらそう言ったコネシマは、彼女の肩を掴むとぐるりと半回転させ扉の方へと歩かせる。
「はよ行くで」
『あ、歩けるってば！』
「はよぉしてぇ」
後ろからはコネシマに押され、前からはロボロに腕を引かれる。小さい子が大人に連れられるような状態にAは『大丈夫やから！！』と声を上げた。
鬱が友人達の現状を受け入れる速さに困惑していれば、トントンが「屋内で生活出来るの久しぶりな気ぃする」なんて言ったりするなど、わちゃわちゃと執事に着いて行った。
しばらくすると周りの雰囲気も変わり、木製の扉が並ぶだけの静かな廊下へと通された。
ゾムとロボロが相部屋にされ、部屋に入る前から喧嘩を始めるものだからAはトントンと共に止めた。学生じゃあるまいし、25歳にもなってする喧嘩の内容じゃないと呆れた。げらげらと笑っていた鬱とコネシマも同様だ。
次にコネシマとトントンが部屋に通され、残されたのは鬱とAのみとなった。
「鬱先生1人か、ええな〜」
「え、なんで？俺らも2人やんな？」
『いや流石に無い』
期待に満ちた顔でAを見た鬱に、ぴしゃりと言い返せば「ちゅめたい…」としょげた。気心の知れた友人と言えども、男と2人っきりになるのは避けたいと考えるのは普通の事だろう。
「Aちゃんおるのに一人部屋とかさみし〜」と言う鬱に、執事は変わらず丁寧な対応で部屋に案内する。最後のAも同様に一人部屋へと案内された。
全員分の部屋を案内し終えた執事は「何かありましたら、お呼び下さいませ」と言って、廊下を去って行った。
A達も特にする事は無かったため、大人しく宛がわれた部屋へと入った。
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