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「失礼ですが、目の方が…？」
『えーと、見えない訳じゃ、ないんですけど…少し色の方が、』
自分の目元に手を当てながらAが答えれば、執事は「大変不躾な事をお聞きしました」と深く頭を下げた。流石にそこまでしてもらう程の事ではないと、Aは焦った。
『そっそんな！執事さんが悪い訳やないので…！』
「別にAも悪くないやろ」
手をわたわたと落ち着きなく動かすAにぴしゃりとコネシマが言い放つ。その顔は不機嫌そうに歪んでいた。
その言い方では執事ではなくAが悪いみたいに感じるのだが？とでも言いたげな顔だった。
その視線にAは言葉を詰まらせた。どう返したものか分からなくなってしまったのだ。
何とも言えない空気が流れるが、ゾムの「あったかい粥はよ食べなもったいないで」という言葉により仄暗い空気はすぐさま消え去った。
『そ、やね』とぎこちないながらも笑顔を見せ、執事に再度気にしないで大丈夫だという旨を伝えたAはやっとの事で粥に手を付けた。
柔らかくなった米はほんのりと甘く、じんわりと胃の中に温かさが広がっていくのを感じた。寝起きの胃にはとても優しいものだった。
『おいし、』
「やんな！」
粥など体調を崩した時くらいにしか口にしないが、ここまで美味しいものだっただろうか。あの執事が作ったこの粥が特別美味しいだけの可能性もあるかもしれないが。
黙々とレンゲを口に運び、あっという間に食べ終わってしまった。
「なんか久々に飯食った気ぃするわ」
食った食った、と皆満足げに腹をさする。その姿に執事は表情を柔らかくし「お口に合いましたでしょうか？」と聞いてくる。とても美味しいものを食べさせて貰ったと、皆で粥の味を褒めた。執事は糸目を細めて喜ばし気にしているようだった。
「よかった〜海老入って無くて」なんて安心しているコネシマに「粥にはあんま入れんと思うぞ」とトントンがツッコんだ。
『桜海老なら入ってそうなイメージあるけど』
「あ〜それはどうなん？」
ぽつりと呟いたAの言葉を拾ったゾムは、それをコネシマに投げつける。数秒考えた後「微妙やな」と苦い顔をして答えた。その顔は微妙というより嫌いの顔ではなかろうかと、その場の全員が思った。
「Aは？海老」
『うーん…私は海老より卵のが好きやな』
薄い絹みたいな卵がふわふわになっているのが好き。
なんだか無性に食べたくなってしまったので、帰ったら早速作ろうとAは思った。
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