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訳が分からず、Aは考えるが結局何も分からなかった。
彼らも考える事を放棄したように、ふざけだす。そのわちゃわちゃとじゃれ合う姿に、不思議と学生時代に戻ったかのような感覚がして、少しだけ感じていた意味の分からない状況下への恐怖感が薄れたようにAは感じた。
そんな時、部屋の扉が開かれ一人の男が現れた。
「お目覚めでしょうか」
「誰や！」
「はい」
『シッマ喧嘩腰やめときや…』
きっと扉の方を見据えながら声を上げたコネシマを、どうどうと落ち着けながらAはその男を観察する。
白髪交じりの銀に近い髪を丁寧に後ろへ撫で付け、黒い燕尾服を纏い、紳士的な立ち居振る舞いをしている。見たところ齢は還暦近くにも見えるが、動きのしなやかさに年齢は感じさせない。
不思議と気品があるようにも感じる。
Aは白と黒に変換される視界の中でも、なんとなくこの男性の身なりが元々モノクロに近い配色なのだと思った。
何者なのだろうかと、その場の全員が訝しむ中その執事のような出で立ちをした男は口を開く。
「先程パーティーで飲み潰れていらっしゃったので、勝手ながら此方で休んで頂きました」
その言葉に皆一様に「ぱーてぃー？」とIQの低さを曝け出していたが、トントンを始めすぐに「すみません〜」ととりあえず感謝を伝える運びとなった。
はて、彼らと共にいる記憶もなけりゃパーティーに参加した記憶もないのだけれど、なんて言葉を出すのは気が引けたのは言うまでもない。
そして、酔い覚ましで粥を用意したというその執事然とした男の言葉を拒否する事が出来なかったのも、想定に容易いだろう。
食堂へ案内しようと先だった執事の男に付き従うように、皆で目を覚ました部屋を出る。
「A、大丈夫か？」
『ん？うん、大丈夫やで』
ゾムが心配の声を上げて手を差し出してくれるが、気持ちだけ受け取っておいた。
見たところ何か奇抜な色合いにしてあるようではなさそうだし、これなら見える視野が2色でも特に危険は無いように感じたから。
そのままロボロの歩いた道をなぞるように足を踏み出した。
既に私達以外の人々は眠りについてしまったと説明をしながら案内を進める執事。そんなにも遅くまで眠ってしまったのだろうかと疑問に思ったが、そんな深夜にも関わらずこうして私達の介抱をしてくれている彼には感謝しなくてはならないな、という気持ちから疑問は消え去った。
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