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「お……、！？なんやお前ら！！」
目を覚ますと見慣れぬ場所に、見慣れた友人達。そのアンバランスさに脳が混乱した学生のような出で立ちをした男は声を上げた。それは友人達も同様なようで、各々「どうした？」「なんでお前がおんねん」「ドッキリっすか？」なんて言っている。
そんな騒がしい声で溢れる空間の中、1人だけすう、と静かな寝息を立てている女が一人。
「A、」
「なんやA寝とんのか？」
「えっAちゃんの寝顔とか見たいんやけど！！」
その女の周りに男達はぞろぞろと集まり、一様にその姿を眺める。
部屋に置かれているソファーに完全に身を預けているAと呼ばれた女。寝息が口から洩れている事や、胸が上下している事から命の灯を感じる事は出来る。だが、書生のような出で立ちをした男を筆頭に名を呼ばれても、全く反応を示さない。
仕方なしに、書生の男が身体を揺すれば伏せられていた睫毛がぴくりと震える。長い睫毛と薄い瞼に隠されていた硝子のように透き通った瞳を覗かせて、いかにも寝起きといった様子で男の名を呼んだ。
『、ん……ろぼろ、？』
「あ、起きた」
「あ〜もったいない〜もっと眺めたかったんに」
ソファーの足元にしゃがみ込んでいた男に気付いたAは、その男にも声を掛ける。
『うつ、せんせ』
「鬱やでぇ〜ぽわぽわしとるAちゃん可愛え〜」
寝ぼけ眼な状態なのをいい事に、するりとAの手を握る鬱。白魚のようにきめ細かに白く細い指を堪能しつつ「目覚めのキスなどいかがでしょう」なんて言う始末である。周囲からの冷たい視線や叱咤の声なんて物ともせずにこにことするその姿には、一周回って尊敬の念まで出てきそうになる。
鬱のその対応で逆に目が覚めたのか、Aは『…冗談きついわぁ』とじわじわ近付いてきていた彼の鼻先を押し返しながら答えた。
『シッマに、ゾムに、トントンに…なんで皆勢揃いなん？』
「こっちが聞きたいねん」
ソファーに預けていた身を起こしながら、若大将、忍者、警察官のような出で立ちをした男達にも声を掛ける。
かく言うAも、戦前の女学生のような振袖と袴を纏っていた。こんな服装学生の頃、しかも卒業式くらいでしか着た事はない。
寝起き早々に友人達と一緒にいるような状況になった記憶は無いし、それは彼らも同じであったようだ。
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