31話 -Side Norman- ページ32
ただの妄想だ。
…そうであったらよかったのに、と、もしもAちゃんが寝言でもいいから僕を好きだと言っていたら、なんて都合の良い妄想だ。
寝ている間にAちゃんが静かに涙を流したこと、それを僕が拭ったこと、勢いに任せて彼女の額にキスをしてしまったこと、全部僕だけの内緒だ。
「…あのね、Aちゃん。
風邪で頭が回らない時に、こんなことを話したら君の負担になってしまうかもしれない、ってわかってるけど、言わせてほしい。
僕は、Aちゃんを本当に尊敬してる。
すごく努力家で…優しい子で…真っ直ぐな子だと、本当に思っているんだ。
…まさか、グレイス=フィールドに進学してくれているとは思ってなくて。
超難関校と言われるほどのここに来るのは、君のいた中学でもなかなか難しいことだと思う。
本当に、ありがとう。
僕の言葉を忘れないでいてくれて、ずっと頑張ってくれて…嬉しかった。
…僕は、
僕は、君が好きだ。」
…言ってしまった。
元々、エマのことは恋愛対象として見てないと、そう言うつもりでここに来たというのに。
いつから好意を持っていたのかと聞かれると、恐らく最初からだ。
下心を持って近付いてくるような、クラスメイトの女子とは違う目をしていて。
この子は違う、この子はきっと僕を見てくれる、って直感だったけれど、あの時の高揚感は、きっと恋だった。
僕の言葉に目をぱちくりと瞬きさせるAちゃんを見て、思わずクス、とまた笑ってしまった。
「ごめんね、また混乱させちゃったね。
…Aちゃんが元気になった時、ちゃんと告白させて。」
『…っま、…えっ、うぁ、え…?』
元々ほのかに赤く染まっていた顔は更に赤くなっていて、可愛い…とそれしか頭に出てこなかった。
なんとなく、彼女は嫌がらないだろうという謎の自信から寝ているAちゃんの頰を両手で包み、まじまじと見つめる。
…うん、可愛い。
『…っえ、と、は、はずかしいな、のーまん、くん…』
絞り出した言葉がそれか。
…嫌がらなかったって、期待しても、いいよね?
「…ごめん、嫌だったら、元気になってから僕を殴っても、みんなに言いふらしてもいいから。
…ごめん。」
何も言わせないように、音を立てずに口を重ねた。
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りお(プロフ) - のまーんくんは、くさ (2021年5月31日 9時) (レス) id: 3c42b7c772 (このIDを非表示/違反報告)
約ネバの壺(?) - ニヤニヤが止まらない辞められなぁい(?)ねぇ、ホントに生まれてきてくれてありがとうっ!ぼくちん(ぇ)感動しちゃった(余計なお世話)最高だぁ、更新復活待つよぉ(無理にとは言いません、自分のペースで投稿してください^^*) (2020年3月17日 22時) (レス) id: b160f4c76e (このIDを非表示/違反報告)
ポップコーン(プロフ) - めっちゃニヤニヤ止まらないんですけど……どうしてくれるんですか。本当にこんな作品書いてくれてありがとうございます。更新復活待ってます!!! (2019年12月22日 2時) (レス) id: e0cba1f570 (このIDを非表示/違反報告)
あんみつ(プロフ) - {*美柑*}さん» コメントありがとうございます!終わりそうな気配を察知しちゃいました…?笑 引き続きお楽しみください!! (2019年9月9日 16時) (レス) id: 1f21d8b5e1 (このIDを非表示/違反報告)
{*美柑*} - もうすぐ終わっちゃいそう…続くよね!?続編っていうか付き合った後のお話も描いてほしいな!?私もノーマンくんとキスしたい………ずるい…夢主ちゃんになりたい……… (2019年9月9日 11時) (レス) id: 44879474c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんみつ | 作成日時:2019年8月17日 22時