捌話 ページ10
暫く室内を見回していると、背後から人が来る気配がして急いで物陰に隠れる。
(あれは……親子、かな)
所々薄汚れた着物を着た女の人と、まだ十つくらいの男の子。身なりからあまり裕福ではなさそうなのに、酒を買いに来たのだろうか。それに子供を連れて。
店内では、親しげに話す母親とこの酒屋の店主らしき男。暫く見ていると男が顔の大きさくらいの袋に銭をいっぱいに詰めて、母親に渡した。
(…………!!)
それだけじゃない。袋を受け取った母親はまるで交換だ、ともいうように男の子を店主に差し出したのだ。
(この時代に酒屋で高利貸し?いや、それよりもなんで男の子を……)
様々な疑問が浮き出るが、あるひとつの確信に心臓がどく、どく、と脈打つのがわかった。
男の子を受け取ったその一瞬、店主が発した禍々しい気配。
……間違いない、あれは“鬼”の気配だ。
(取り敢えず、不死川さんに報告しなくては)
鎹鴉に要件を伝えて不死川さんの所に行ってもらった。まだ別れてからあまり時間が経ってないから、半刻もせずにやって来るだろう。
このまま不死川さんを待ってから行った方が安心ではあるが、今は時間が無い。私の予想が当たっていれば、男の子が危ない。
元々ない気配をより一層潜めて、店内に入る。まだ店内にいる母親には目もくれず、そのまま奥へと進む。もちろん母親は私に気がつかない。
(こんな時ばっかり役に立つから、なんというか癪に障るんだよなあ)
・
細く長い廊下の奥部屋、さっきまで消えていたのが嘘かのようにひしひしと感じる鬼の気配。
周りからは鼻が良いわけでもない私でさえ嫌になるくらいの血の臭いがする。
(この気配も、血の匂いも、嫌いだ。だってこれには、いい思い出なんてひとつも無いから)
出来るだけ早足で進むと、部屋の障子の影に男の子に向かって腕を振り上げている鬼の姿が浮かび上がった。
(まずい……!)
脚で地面を思い切り蹴りだし、部屋までの距離を一気に詰め、刀の柄に手を掛ける。
鬼の影に狙いを定め、呼吸を整える。
(呼吸は深く、激しく、それでいて、全ての殺気を抑えとどめるように)
『霊の呼吸 壱ノ型』
――――“陰火(いんか)”
視界いっぱいに、嫌なくらいに真っ赤な血飛沫が舞った。
1020人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます!更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます! (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ!!!!、!!!!続きが気になる!!!!!更新頑張ってください!!!!応援しています! (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あぶらげα | 作成日時:2019年9月22日 14時