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廿伍話 ページ28

――咲子姉さん






涼しげな風が吹き、辺り一面に咲く彼岸花がゆらゆらと揺らめく。川を隔てて向こう岸にいる咲子姉さんの表情は、背中を向けられているせいで見ることが出来ない。






――待って、姉さん






声をかけても姉さんが振り返ることはなく、その背中はどんどんと遠くなっていく。追いかけようとするも、身体が押さえつけられているように動かない。





――お願い、待ってよ





目尻が熱くなり、息も苦しい。姉さんの姿はもうほとんど見えない。






――ねえ、姉さん






「お願い、許して」







――――――



はっと目を覚ます。汗でへばりついた髪が気持ち悪い。乱れた息を整えながら辺りを見渡すと、見慣れた景色に段々と鼓動も落ち着いていく。




(蝶屋敷、だよね)




しのぶちゃんも蝶屋敷で働いている女の子たちも見当たらないけど先日も来た病室だと分かり、ほう、と息を吐いた。




ぼんやりとする意識の中ぼうっと天井を見つめていると、ふと入口から人の気配を感じて視線を向ける。





「Aちゃん!!」



等の人物は私と目を合わせると手に持っていたお菓子を床に落とし、そのまま私に飛びついてきた。





「蜜璃、ちゃん」




ぎゅうぎゅうと抱きつかれて苦しいと言おうとしたけれど、蜜璃ちゃんがぐすっと鼻をすするのが聞こえてその言葉を飲み込む。暫くすると蜜璃ちゃんは私の肩に顔を埋めたまま話し出した。




「私、わたし、本当に心配したのよ!!だってAちゃん3日も眠ったままだったんだもの!!


私、ぼろぼろのAちゃんを見たときほんと、どうしようかと……!」





もっと早くに行けなくてごめんね、とおいおい泣きながら言う蜜璃ちゃんの背中をとんとんと優しく叩きながら今までのことを思い返す。



(そうだ。私、任務に向かう途中の列車の中で上弦の参と……)




そこでふと脳裏に煉獄さんの姿が過ぎる。片目も潰れ、所々の骨も折れ、満身創痍の姿……



「み、蜜璃ちゃん、煉獄さんは……!?それに炭治郎くん達も……!」




焦ったように言う私の言葉に蜜璃ちゃんは動きを止め、優しく私の両肩に手を添える。私と目を合わせると、そっと呟く。







「煉獄さんはね――」









蜜璃ちゃんの言葉を聞いてすぐ、私は蜜璃ちゃんの制止の声にも振り返らず、蝶屋敷を飛び出した。

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あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます!更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます! (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ!!!!、!!!!続きが気になる!!!!!更新頑張ってください!!!!応援しています! (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あぶらげα | 作成日時:2019年9月22日 14時

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