廿壱話 ページ24
(全然見つからない、早く壊さなくてはいけないのに!!)
ここはAの夢の外側、無意識の領域。その場所にいるこの男もまた、煉獄達を含めた鬼狩りの“精神の核”を壊しにきた者だった。
“精神の核”は壊されると皆廃人になってしまう。A達に夢を見せる術をかけた下弦の鬼魘夢は、これを壊させることで鬼狩り達を弱体化させようとしていたのだ。
しかしーー
「くそっ!!本当、何処にあるんだ!」
この男は先程からずっと、Aの“精神の核”を見つけられずにいた。いや、見つけられるはずがないのだ。
“精神の核”は持ち主を表す。
Aは本当に気配が薄い。それは、Aをよく知る者であっても探そうとしないと見つけられない程なのだ。そんなAの“精神の核”を先程会ったばかりのこの男が見つけられるはずがなかった。
どこまでも真っ白なこの空間の中、確かに“精神の核”は存在する。しかしそれが壊されることは殆ど無いと言っていい。
ーーしかしそれは、Aが夢から覚めることができないということも意味している。
煉獄達にこの列車内に居ることを知られていないAは、煉獄達のように禰豆子の血鬼術で夢から覚ましてもらうことも望めない。
実際、煉獄達が既に魘夢の討伐に力を注いでいる中、Aは未だ夢の中にいるのだった。
・
「ーーそして、灰かぶり姫は王子とめでたく結ばれたのでした」
どこか西洋じみた本を、ぱたんと閉じる。
「いつ聞いても素敵な話ね、惚れ惚れする。
ほんと、英国の本も読めてしまうなんて流石Aね!!」
目をキラキラとさせながらそう言う姉さん。その姿はさっきとはまるで違って幼子のようで、思わず私まで笑顔になる。
「えへへ、そうかな?」
「そうよ!!Aの語訳の腕は世界一、いや宇宙一だわ!!」
「いや、流石にそれは言い過ぎだと思うけど……」
父さんから貰った英国の本を私が訳して姉さんに聞かせる。そうして姉さんから批評、というか極度の誉め言葉をもらうこの時間が私の楽しみだった。
姉さんは私の話を楽しそうに聞いてくれる。この瞬間、私は役に立てているのだと実感できるのだ。
父さんが買ってきてくれていた洋菓子を2人で食べていると、ふと、姉さんが思い出したように言った。
「そうだ、次はあの話が聞きたいな。
Aにとって、とても大切な話」
(はて、そんな話あったっけ?)
姉さんの急なリクエストが理解できず頭を捻らせていると、姉さんはまた一言だけ呟いた。
「鬼狩り様の、お話」
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あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます!更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます! (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ!!!!、!!!!続きが気になる!!!!!更新頑張ってください!!!!応援しています! (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あぶらげα | 作成日時:2019年9月22日 14時