壱話 ページ3
半年に1度開かれる柱合会議。嫌々ながらも私はそれに参加している。
今回の議題の1つである隊士の裁判が終わったところで、ほっと布を掴んでいた手の力を弱めた。
(それにしても人を食わない鬼か)
俄に信じ難い。
鬼は醜く許し難い存在。これまでの任務で幾度となくそれを感じてきた。私が鬼殺隊に入隊した理由も、そんな鬼を滅する為だったのだから。
しかし、お館様が認めたというなら話は別だ。あのお方のことだ、きっと何か感ずるものがあったのだろう。
それにきっと私があそこで反論しても聞き入れられなかっただろうし、物理的に。
「それじゃあ、会議は一旦休憩としよう。続きは夕刻、私の屋敷の中で行うよ」
『御意』
柱全員の声が屋敷に響き渡る。
お館様が背を向けて部屋の奥へ戻ったのを見計らって、私も後に続いて出ようとする。
(さあ帰ろう帰ろう。次の会議まで時間あるし、少し遠くのおでん屋で昼食でも取ろうか)
この会議の合間の時間は好きだ。柱ともなるとこういった休みの時間はなかなか取れないし、それに私がもっとも苦手とするこの柱合会議から一旦気を置くことが出来る。
いつもはこの後柱どうしで昼食がてら近況報告会なるものが行われるのだが、遠慮させてもらおう。どうせ私が参加してもしなくても変わらないし。
他の柱に気づかれないよう急いで出口に向かう。幸い私は気配を消すことに長けている。このままそっと襖を開けて出ればーーー
「おい、どこに行こうとしてんだ幽門。まさか帰ろうって訳じゃねえよなァ」
「ひぇ......」
そんな声と共にずっしりとした重みが頭にかかる。恐る恐る見上げると、鍛え上げられた腕に私よりも幾分も高い背丈。
「なに随分と地味なことしてくれようとしてんだ。前だってバックレやがったんだ。今回こそは参加してもらうぞ。」
でた。私の苦手な柱第1位、音柱 宇随天元。
彼はその端正な顔に黒い笑顔を貼り付けて、私の頭をギリギリと掴んでくる。てか痛い痛い痛い。この筋肉おばけめ。
「いや、あの...どうせ私が行かなくたってーー」
「アァン?」
「ひぃぃ...なんでもないです」
どんなに隠れてもこの人には見つかってしまう。何でも昔は忍だったらしい。だから気配には敏感なのだとか。
どんなに避けても見つけられるし、その度にちょっかいを出される。だから苦手なんだ、この人は。
しかしどんなに言われようと行きたくないものは行きたくない。私の癒しのおでんのためにもどうしてもーー
おでん、おでん.....そうだ!
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あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます!更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます! (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ!!!!、!!!!続きが気になる!!!!!更新頑張ってください!!!!応援しています! (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あぶらげα | 作成日時:2019年9月22日 14時