拾壱話 ページ14
「情けねェ死に方しようとすんじゃねえ」
防ぐものがなくなったことで勢いよく振り下ろされた酒瓶が私にあたることはなく、代わりに聞こえたのは何処か優しさを含んだ男らしい声だった。
「......不死川さん」
不死川さんは母親に手刀をくらわせ気絶させると、ずかずかとこっちにやってくる。そうして私の前に立つとじっと私を見つめてきた。
「あの、不死川さん、すみません私――
......いでっ」
ごーんと鐘のような音が頭に響き渡る。ちょっと待って今この人私の頭殴った!?ちょ、ほんと痛いんだけど......ってやばい涙出てきた、痛さで。
暫く悶々と痛みに悶えていると、ふと不死川さんが口を開いた。
「お前は、お前の人生は、たった1人の言葉だけで終わらせられるほどつまらねェものだったのかよ。
お前は今まで、たったそのくらいの覚悟で生きてきたのかよ」
怒気を含めながら諭すように言う不死川さんの言葉に、また鐘で打たれたような衝撃が走った。今度は痛みでではない。
(そうだ、そうだよ。私は今までこんな覚悟で鬼を狩ってきたわけじゃない。たとえ何が起こっても、何を言われても、私は今までの私が信じて進んできた道を進んでいくしかないんだ)
――もう後戻りは、できないのだから。
ああもう、駄目だなホント。人にすぐ流されてしまうのは昔からの悪い癖だ。自重せねば。
「すみません、不死川さん。おかげて目が覚めました。
......もう本当に、柱だというのに情けないです。何というか2度も助けていただいて、その、ありがとうございました」
本当に、不死川さんには助けてもらってばかりだ。このあいだだって――
(この間......あ、そうだ。おはぎ忘れてた)
渡そうとしてすっかり忘れていたおはぎの存在を思い出し、懐からおはぎが入っていた箱を取り出して開ける。
「あの、不死川さん。この間のお礼と言っては何ですが、しのぶちゃんからおはぎを頂いて......
って、うわぁ」
「ぐちゃぐちゃだなァ」
戦ったときにすっかり存在を忘れていたため、おはぎはぐちゃぐちゃになっていた。正直、食べれるような状態ではない。
「うぅぅ......ほんとすいませんんん」
申し訳なさ過ぎておはぎをしまおうとすると不死川さんはその手を止めておはぎと呼べるかわからないものを1つひょいっとつまんで食べた。
「ん、うめェ。
......お前も食べろよ」
そう不死川さんに促されて私も一つ食べる。
「おいじいでずぅ......」
不死川さんと食べたおはぎはとても甘くて、何処かしょっぱかった。
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あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます!更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます! (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ!!!!、!!!!続きが気になる!!!!!更新頑張ってください!!!!応援しています! (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あぶらげα | 作成日時:2019年9月22日 14時