拾話 ページ12
首を切られ、段々と灰になり消えていく鬼を見届ける。
(この鬼、確かにたくさんの人を食っていたんだろう。
でも、全く強さを感じなかった。きっと下弦にも満たないくらいだな)
ーーでも、だとしたら何故彼処まで気配を感じなかったのか。
様々な疑問が浮かび上がるが、取り合えずは男の子の安否を確認しなくては。見たところ怪我は無いが念のためである。
そう考え、男の子を恐がらせないよう刀を置いて側による。できるだけ安心できるようにと男の子の顔を覗きこんだ。
「あの、君。だいじょう――」
「どうしようどうしようどうしよう!!」
思わずひゅっと息が詰まるのがわかった。
覗き込んで見えた男の子の顔は、とても並大抵の人がする顔ではなかった。
瞳孔は開き、何も写していない。先程からずっと呟き続けている口は、密かに震えている。
顔いっぱいに汗が浮かび上がっているその顔から、どう見ても何かに怯えているのが分かる。
(鬼はもう消えたのになんで……)
予想だにしていなかった男の子の反応にこっちまで恐怖が湧き上がってくる。
この男の子の、この様子。鬼に食べられそうになっていた時もここまでじゃなかった。だとしたら、この子は“鬼が殺された”ことに対して怯えているのだ。鬼が殺されてしまったことによって、これから起こる“何か”に。
不死川さんに話そうとした、あの予想。この様子だともしかしたら――
その瞬間、背後からとてつもない殺気を感じた。
振り向くと、さっきまで表にいたこの子の母親が所々割れた酒瓶を私に向かって振り上げているのがわかった。
「お前ぇ!!殺してやる!!」
母親が切羽詰まった表情で振り下ろしてきた酒瓶を、手元に置いてあった刀の鞘で受け止める。
(なんで、なんでこんな……)
「店主は、私たち町の奴らの生命線だったんだ!!この人がくれる金のお陰で私たちは生きてこられた!!
それをお前……!殺すなんて!!」
全身が一気に冷めきるのがわかった。さっき聞いた鬼の言葉が蘇る。
『町の奴らだって喜んでいたさ!!』
町の人達は皆、知っていたのだ。店主が鬼だと知った上で、子供を渡していたのだ。
「終いにはこんな出来損ないな子まで生かして……!」
そう言って泣き崩れる母親。視界の隅には未だ震え続けている男の子が見える。鬼を斬ってここまで人に恨まれたのは、初めてだった。
(また、間違えた……?)
私が鬼を斬ってきたのは、間違いだったというのだろうか。
鞘を握る手の力が、抜けるのが分かった。
1022人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます!更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます! (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ!!!!、!!!!続きが気になる!!!!!更新頑張ってください!!!!応援しています! (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あぶらげα | 作成日時:2019年9月22日 14時