31 白髪の彼 ページ31
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「……どうして遺作なんて出したの？」
YG「……」
「死んでないのに」
冷蔵庫からビール瓶を2本出して窓際に座る。
隣でなにも言わずにあぐらをかいて窓の外を見つめるユンギが、ただただ愛おしかった。
YG「死んだんだよ、俺はあのとき」
遠くを見つめるその瞳が優しくて、今はもう出会ったときのような孤独も、それに伴う哀しみも感じられないことが嬉しかった。
YG「人に怯えて、自分に怯えて……毎日死ぬことを怖がって生きていた俺はあのとき死んだ」
「だから遺作にしたんだよ」と微笑んで、ユンギがビールを喉に流す。
私もひと口ビールを飲むと、弾ける泡がいつもよりずっと甘い気がした。
「じゃあまた新しいペンネーム考え直さなきゃだね」
YG「ん」
あたたかい日差しがサアッと部屋を通り抜け、私たちをゆっくり日曜の午後へと溶かしていく。
この時間がずっと続けばいいなんてことを考えながら、ユンギの肩に頭を載せた。
「ずっと一緒にいようね。死ぬまで……ううん、来世でも」
お酒がまわってきたのか、あんまりうまく働かない頭でそんなことを言う。
独りで生きていた頃のことがもう思い出せないくらい、気がつけば私はユンギでいっぱいだった。
YG「来世なんかねーよ」
空になった瓶を脇に転がすと、ユンギが無愛想にそう言う。
「……え？」
予想外の言葉に頭を上げると、ユンギは外の世界を見ていた視線を私へずらして言った。
YG 「来世なんかねーから、1回きりのこの人生で飽きるほど愛してやる」
白髪の彼は、猫のように笑った。
-fin-
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寧桜(プロフ) - アオイさん» 一気読みだなんて！ありがとうございます(´∀｀*) (2020年7月14日 21時) (
レス) id: d17dad552a (このIDを非表示/違反報告)
アオイ(プロフ) - 凄く素敵な作品でイッキ読みしてしまいました！こんないい作品に出会えて良かったです！ (2020年7月14日 19時) (レス) id: eff5f40333 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寧桜 | 作成日時：2020年6月27日 23時
