繚乱の愛、一輪の愛 (ページ7)

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「……」

昔はこんなの慣れっこだったはずなのに、あなたのいない華々しい世界っていうのはどうも苦手みたいで。

気持ちが悪い胸と目眩のする頭を抱えて、そこまで人気のないバルコニーへ出た。

ぽつぽつと人はいるけど、僅かに涼しい風が心地よくて、すっかり体は落ち着いていく。

無情に辺りを照らす月は、少し欠けていて。

やっぱり僕は、もうあなたの影を求めるのはやめた方がいいみたい。

バルコニーから広間を振り返ると、溢れかえる人々が嫌でも目に入る。

あの波のどこか密やかな場所に、あなたはきっといるはずなのに。

こんなに近くにいるのに会えないのは、やっぱり運命がそれを拒んでいるから？

正直なことを言うと、本当は期待してたんだ。

もしかしたら今日の舞踏会に行けば、あなたと会えるかもしれない、って。

別に、あなたが僕をわからなくったっていい。

言葉を交わさなくったっていい。

ただ、一目その姿をこの目に焼きつけることが出来ればいいから、って。

でも僕は、あなたを見つけることすらできなくて。

そもそも臣下が主人にこんな気持ちを抱くこと自体おかしな話で、あってはならないことなんだけど。

やっぱり僕とあなたは “あの日” 、別々の道を歩き始めたんだなって寂しく思うよ。

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