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毎日が夢で、いつ覚めるのか、そんなことに怯えるほど幸せだった。
「ジン、昔にも増して肩幅広くなったよね」
「そう、ですか………？」
「うん、男らしくていいと思う。ジンってほら、ちょっと女々しいっていうかオネエっぽいとこあったりするでしょ？」
「なっ、」
なんてこと言うんだこの人は。
A様はときどき突拍子も無い言葉で僕の心をえぐりとる。
でも、その屈託のない笑みを見れば全てが嬉しくなって。
“石の女王” は彼女の仮面にしか過ぎなくて、彼女は今でも彼女のままで、あの頃と変わらないんだな、って安心して。
「ねえ、今度こそ城の外へ出ようよ」
「野原？懐かしいですね」
「あ、敬語使わないでよ」
「あぁ…すみませ………ごめん」
「今度使ったらお仕置きだから」
「こわいなぁ…」
「ふふ、あそこは今でも綺麗かなぁ」
小さなたんぽぽが一面に咲いて、あたたかくなると白い綿毛がふわふわとあたりを漂う。
そんな景色が大好きだった彼女に感化されて、僕もあの場所がすっかり気に入っていたけれど、 “あの日” 以来訪れたことはなかった。
彼女を忘れようとしていたから。
もう、会えることはない人を想い続けるのは辛いとわかっていたから。
でも、彼女は今、こうして僕の隣にいて僕に微笑みかけてくれているわけで。
「あなたが願えば、きっとどんな場所でも美しくなる」
僕も同じように微笑みかければ、ふふっと目を逸らされてあなたはバカにしたように僕を見上げた。
「…カッコいいこと言ったと思ってる？意味わかんないよ」
「えっ……」
けらけら笑うあなたが本当に大切で、大好きで。
僕までよくわからない笑みが浮かぶ。
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作者名：寧桜 | 作成日時：2018年10月22日 19時
