＊ ページ43
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「ねえジュンギ」
「なんでしょう」
「彼女、呼んできて」
「……え？」
「もう二週間、会ってない」
「しかし_______」
「呼んできて」
「…………はっ」
きらきらと射し込む日光を遮るようにカーテンを乱暴に閉めた。
すっかり暗くなってしまった部屋は、かつて俺が閉じ込められていた檻のようで、自然と体が小刻みに震える。
いつまで経っても慣れないこの恐怖に、手を差し伸べてくれたのはあんただったのに。
その手はいとも簡単に離れていって。
それならいっそ、初めからそんな手なんて掴まなければいい。
そう思うようになって。
「…なんの用？ジョングク」
いつのまにか背後に立って冷たい声で話す彼女を振り返る。
少し身構える彼女に悲しくなる自分がわからない。
「どういうつもり？」
「…なんのことかしら？」
「ヒョンはもう、死んだんだよ」
「……っ」
傷ついたように目を見開いて伏せる彼女に、やっぱり俺は胸が苦しくなって悲しくなって。
「ヒョンは今はもう、ただの護衛でしょ？」
それでも、あんたは俺にはもう二度とどんな手も伸ばさず、ヒョンだけを見るっていうわけ？
「………それがなに？」
「……………は？」
「心を捧げるつもりもないと言ったはずよ」
憎しみと怒りのこもった視線で俺を見つめる彼女に、俺はもう、かつて抱いていたほどの同じ憎しみや怒りは感じなくなっていて。
代わりにただ、大きな絶望と悲しみと、切なさが胸に迫る。
「………、」
「ジンのこと、愛してるから」
「………っ」
「彼と結婚するつもりも、彼を王にするつもりもないけど、わたしはジンを愛してるから」
「…おい、」
「邪魔しないで」
もう憎しみに染まってしまったはずなのに、怒りしか見えなかったはずなのに。
“邪魔しないで”
その言葉一つで、俺の心臓はナイフで刺されたような痛みに襲われて。
見えない血が心の表面をどくどくと流れていくのを感じる。
それだけならもう行くわね、なんて吐き捨てて、俺を睨んだ後は目もくれずに部屋を出る彼女の背中に手を伸ばしかける俺は。
意味わかんねえよ。
殺したかったはずなのに。
憎んでたはずなのに。
恨んでたはずなのに。
どうしてこんなにも、狂おしく胸が痛むのか。
わけわかんねえ。
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作者名：寧桜 | 作成日時：2018年10月22日 19時
