繚乱の愛、一輪の愛 (ページ37)

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「ねえジン、城を抜け出そうよ！」

「ダメです」

「じゃあお母さまの部屋に忍び込むのは？」

「ダメです」

「んー、じゃあお花摘み！」

「何度言ったらわかりますか。きちんと王女らしく振舞ってください」

兄であるヨン様が亡くなったばかりだというのに、A様はとんでもなくおてんばで、突拍子も無いことばかり言うような人だった。

正直はじめは全然好きになれなくて。

僕が叱りつけると、A様はしゅんとしおれてしまった。

「あと。ジンと呼ぶのもおやめください」

「なんで？」

「ソクジンが本名です」

「長いんだもん」

しゅんとしていたはずなのに、気がつけばけろりとそんなことを言うA様。

ヨン様の遺言でもあるから仕方なく彼女に仕えてはいるけど、そんな彼女が憎たらしくて。

ただの八つ当たりだとはわかっていたけど、意地の悪い口が動き出してしまう。

「どうしてそんな屁理屈ばかり。兄上はもっと賢く、優しいお方でした。少しくらい兄上を見習ってはどうですか？これ以上ふさげたことをおっしゃるなら、僕はあなたの付き人なんてできません」

目を逸らして一息に叫ぶと、後から恐ろしい後悔が募る。

僕、ご主人様になんてことを。

しかも相手は王族であり、王女なのに。

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