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“あの日”以来、もう二度と目にすることはないと思っていたこの庭。
いつも色とりどりの星中から集められた綺麗な花が咲くこの庭だけど、あなたは城の外のたんぽぽが咲く野原の方が好きだったっけ。
少し前を歩くあなたは、大きく欠けた月の僅かな光に照らされているだけというのにもかかわらず、きらきらと神秘的なものを纏っている。
広い庭をしばらく歩いて、だいぶ城から遠ざかったとき、ひらりと髪をなびかせてあなたが振り返った。
「久しぶり、ジン」
「_____________________っ」
そこには、僕が知っている、僕だけが知っているあの頃のあなたがいて。
無邪気で小さなその笑顔が、涙に滲んでいく。
胸の鼓動がどくんどくんとうるさい。
「へへ、もう誤魔化せないでしょ？」
「…A様、」
「まだ “様” づけするわけ？やめてほしいって何度も言ったのに」
「でも、」
“でも”
その言葉に小さく頷いて、歯をくいしばるあなた。
「でも、わたしはもうあの頃の小さな星の小さな王女ではないから。
…そうでしょ？」
懸命に微笑むあなただけど、やっぱり歯は深く食いしばったままで。
その癖、今でも直ってないんですね。
少し背が伸びて大人になったあなただけど、結局あなたはあなたで。
頬を伝う涙に、なんでジンが泣くの、と、あなたはまだ、歯を食いしばったまま苦笑した。
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作者名：寧桜 | 作成日時：2018年10月22日 19時
